【メルマガ独自解説】
 「 リアル半沢直樹だ!」。コロワイドが大戸屋ホールディングス(HD)に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けると、ネット上にこうした声があふれました。ドラマ放映と同時に事態が進行したこともあり、非常に大きな関心を呼びました。
 でも、そもそも敵対的の「敵」とは誰でしょう。ケーススタディー「コロワイドのTOB成立 大戸屋HD、企業防衛は1日にして成らず」で書いたように、コロワイドは最初から「敵対的TOBをやるぞ」と意気込んだわけではありません。もちろん過去の経緯からそうなることを覚悟はしつつも、できることなら友好的にやりたかったのが本音でしょう。「敵対的」か「友好的」かを決めるのは、仕掛ける側ではありません。「このTOBは嫌だ!」と意見表明した、つまり仕掛けられた側の取締役会なのです。
 取材を進めていくと、「コロワイド傘下になれば大戸屋を辞める」という社員もいましたが、「今の経営陣(取締役会)のままではダメだ」という社員やFCオーナーの声も多く聞かれました。なにせ業績がずっと右肩下がりなのですから不満もたまっています。こうした人たちにとってコロワイドは「味方かどうかは分からないが変革のチャンスを与えてくれるかもしれない」(FCオーナー)存在でした。つまり大戸屋HDが全社を挙げて一体でコロワイドという「敵」に立ち向かったわけではなかったのです。
 さらに言うと、TOBの成否を決めるのは大戸屋HDの経営陣でも従業員でもありません。株主です。上場来高値とほぼ同水準で株を買いますよ、というコロワイドを「敵だ!」とみなした株主がどれほどいたでしょう。損をする株主はほとんどいません。日本で敵対的買収というと、心理的ハードルがまだ高いとは思います。しかし成立するときはあっけなく成立してしまうものです。投票権を持っている人たちにとって、敵でなければいいのですから。
(日経ビジネス記者 奥 貴史)