【メルマガ独自解説】
損害保険大手、SOMPOホールディングスが、データやデジタル技術を使ってビジネスモデルや組織構造を変えるデジタルトランスフォーメーション(DX)に本気で取り組んでいます。
裏にあるのは、近い将来市場構造が大きく変わり、改革が待ったなしになっているという危機感。自動運転時代が迫り、クルマは所有からシェアに変わって安全技術も格段に進化します。主力の自動車保険市場は先細りが予想されます。既に現実のものとなっている人口減・高齢化もそこに影響し、子会社で運営する生命保険事業にも影を落とします。
同社の桜田謙悟社長・グループCEO(最高経営責任者)はデジタル化で既存事業を効率化し、同時に新事業を興すDXに徹底的に力を入れてきました。今年9月には、事故車を事業者間で取引する複数の市場をつなぎ合わせるプラットフォームをつくり、今後はオフィス什器(じゅうき)やゲームセンターのゲーム機など多様な分野に広げます。BtoBでのメルカリになる算段です。
米スタートアップ企業と提携し、AI(人工知能)を使った防災システムの販売に乗り出し、自動運転のシステム開発会社と組んで、そのサポート事業も構築し始めています。デジタル化を動かす司令塔になる幹部は他社から招き、現場のIT(情報技術)エンジニアやデザイナーも他社から多数集めました。その力を使い、保険事業の効率化を図るアプリやシステムを自社開発。15年に参入した介護事業でもデータ活用で入居者の健康管理と業務の効率化を進めています。技術から介護を変えようとしているのです。
事業の変革スピードは確かに速くなっています。DXは事業改革であると同時に社風改革にもなっています。ケーススタディー「デジタルは社風も変える 損保の殻を破ったSOMPO」、ご一読ください。
(日経ビジネス編集委員 田村賢司)
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