【メルマガ独自解説】
 「団地住まいの家族を相手に商売していれば、『もうかるのが普通』とすら考えていた時代もあった」。記事中で登場する東京都清瀬市の旭が丘団地。団地近くの商店街で半世紀以上にわたって金物屋を営んでいるという男性店主は、こんな言葉を口にしていました。商店街の入り口に残る案内図には、50以上の店の名前が記されていましたが、今ではその半数ほどが閉店してしまったそうです。
 かつて高度経済成長期は子育て世帯でにぎわった首都圏の団地にも、少子高齢化の波が押し寄せています。高齢化で住民の購買力が落ちれば、団地を商圏とする商店は次々に閉店していきます。それはやがて、買い物弱者を生み出すことになるでしょう。旭が丘団地でも日常の買い物に困難を感じている高齢者は少なくありません。
 「ここは陸の孤島」。店主は街の状況をこんな言葉で表現していました。こうした「分断」は今や地方だけでなく、東京近郊でも広がりつつあります。「首都圏分断」で社会はどう変わるのか。その現実をどう受け止めればよいのか。「分断」がもたらす未来について、考えてみましょう。
(日経ビジネス記者 神田啓晴)

特集 首都圏分断 「移動なき社会」の未来

PART1
コロナ禍のテレワークで増える「自宅2km圏」で暮らす人々

PART2
国際化による分断 異文化ゾーン急増で “包囲”され始めた日本人

PART3
高齢化による分断の影響 「昭和の郊外団地」に分断される高齢者

PART4
東京は江戸へ回帰する 「移動なき社会」が育む3つの注目分野