【メルマガ独自解説】
 新型コロナウイルスの影響で苦しむ航空業界。そんな中でANAホールディングスと日本航空は7月、相次いで採用活動の中止を発表しました。キャビンアテンダントやパイロットといった花形のように扱われる職種から、滑走路で航空機の誘導や貨物の積み込みなどを行うグランドハンドリング、さらには総合職として入社した社員が主に担うバックオフィス業務まで。働く場としての裾野はとても広く、学生からの人気が高い業界の一つですが、採用中止となったことで目の前が真っ暗になってしまった、そんな学生も多いのではないかと思います。
 1年「就職浪人」をすれば、また航空業界に就職できるチャンスが訪れるかというとそうは限りません。特に国際線は需要低迷が長期化する見込みで、採用活動の縮小も数年単位で続くのは間違いないでしょう。
 こんなときこそ、様々な業界に目を向けてみるのがよいかもしれません。早稲田大学キャリアセンターはオンラインによる企業説明会を実施。1日6社ずつ集め、冒頭に5分ずつ、企業紹介を行った後、仮想の部屋に分かれ、4社の詳しい説明を聞ける仕組みを取りました。あえて志望業界以外の企業の説明を聞かせることで学生の視野を広げさせる狙いです。
 私は就職活動の際、記者志望でほぼマスコミしか受験しませんでした。記者になり、様々な業界の企業を取材していると、「学生時代にこの企業を知っていればここで働きたいと思っていただろうな」なんて思いが時々湧いてきます。
 採用を継続する企業にとって、コロナ禍は普段は振り向いてくれない優秀な学生に入社してもらえるチャンスともなり得るでしょう。現に売り手市場の間は採用難に苦しんだ中小企業の中では、新卒採用を積極的に進めようとする動きもあります。
 学生も企業も「試行錯誤」の真っただ中です。最終的に、皆が満足する結果にたどり着ければと願っています。
(日経ビジネス記者 高尾泰朗)