【メルマガ独自解説】
 「新技術を生かした新商品を出しても、なかなか売り上げにはつながらない」――。老舗筆記具メーカーの三菱鉛筆は近年、そんな悩みを抱えていました。2006年に発売され、年間1億本の売り上げを誇る油性ボールペン「ジェットストリーム」シリーズをはじめ、独自の技術力を生かして多くのヒット商品を生み出してきましたが、他社商品も含めて多様なボールペンやサインペンが出ている中で、新商品を出したときの消費者の消費意欲は鈍いものになってきたそうです。
 成熟市場となった筆記具業界。三菱鉛筆は思い切った挑戦に出ます。それまで長く横浜市にあった素材やペン先の技術といった基礎研究を行う研究部門を、18年の東京都品川区の本社屋建て替えに合わせて本社に一気に移したのです。目的は研究部門を、消費者により近い他部門のそばに置いて、ニーズを反映した商品づくりに生かすこと。消費者ニーズを組み入れる試みはあらゆる業種で行われていますが、三菱鉛筆では研究部門の移転の効果が新たなヒット商品という形で早くも出始めています。ケーススタディー「三菱鉛筆、40年越しの改革、奏功」では商品開発プロセスの進化を考察します。
(日経ビジネス記者 藤中潤)