糸井:とっても「いい子」ですよね(笑)。もともとは、そんないい子ちゃんじゃなかったような気もします。でも、そこにフラストレーションがたまっているのかというと、そういう感じもしないんです……これ、自分に対しても言えることだなと思っていて。自分もそんなにリーダーシップをとる人間ではなかったし、それに対して努力をする人間でもなかったんですけど、やろうとしているんですよね。

デイヴィッド:2人とも、すばらしい組織をゼロから創り上げた。ぼくにはそういうことはとてもできない、とわかっているので1人で活動しているんです。だから、2人のことは本当に尊敬しています。

糸井:ぼくももともとはフリーランスのコピーライターで、デイヴィッドさんと同じだったんですけどね。デイヴィッドさんはきっと、ブライアンさんがやっていることを自分事のように傍から見ているから、それで満足できるんじゃないでしょうか。

デイヴィッド・ミーアマン・スコット(David Meerman Scott)
マーケティング・ストラテジストでありプロの講演者である。16才のときに初めて日本を訪問し、京都府宇治で1カ月過ごす。10年後に再び来日し、ウォール街の経済コンサルティング会社ライトソン・アソシエイツの東京支社を創立する。『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』以外の主な著書に、『リアルタイム・マーケティング』『月をマーケティングする』などがある。

デイヴィッド:ああ、本当にそうです。僕らが友だちになったきっかけというのは、以前もお話した通り、それぞれのパソコンにグレイトフル・デッドのステッカーが貼ってあるのにお互い気づいて……。

ブライアン:しかも、同じ頃に日本で仕事をしていて。

デイヴィッド:そして、同じようなマーケティングのアイデアを持っていることがわかった。そこから一緒に成長してきたし、HubSpotの成長をすぐ近くで見ることができました。経営のストレスは、ブライアンがすべて引き受けてくれた上でね(笑)。すばらしい立場です。だから、それだけでけっこう満足しているんです。

糸井:カーレースのメカニックっていますよね。車が戻ってきた時にピットで直す人。あの人って、ドライバーともう一体なんだと思うんですよ。自分も走っているような気持ちになっている。デイヴィッドさんも同じですね。

糸井:以前、ボストンにあるHubSpotのオフィスを訪ねた時に、ほぼ日とHubSpotは似ているところもありますが、違うところもあるとわかりました。なかでも一番の違いは「お客さんは誰か」ということ。ぼくらはB to C(Business to Consumer)のビジネスをしていますが、ブライアンさんは「対消費者はとてもむずかしいから、ぼくらはB to Bでやっている」と言っていらした。その後、この部分についての考えは変わりましたか?

すべてのビジネスは「B to H」

ブライアン:今も同じように考えています。B to Cのビジネスは非常に難しく、リスクが高く、宝くじみたいなものだと。消費者の行動というのは読めないものですから。ただビジネスの領域として、マーケティングだけでなく、営業の支援もはじめました。営業というのはどうもうさんくさく思われているもの。それをもう少しスタイリッシュに、人々に愛されるものに変えたい。営業の領域も手がけるようになったことが変化ですね。

糸井:当時から思っていたんですけど、B to BだとおっしゃるわりにHubSpotはコンシューマーをとても意識した会社ですよね。だって企業文化の
条文も表に貼り出して、それを見ている人がたくさんいるわけでしょう。社員の採用にも力を入れていますよね。「うちの会社で働きたい人!」という呼びかけは、to Cなんです。対コンシューマーの体質を持っていて、人間をいつも視野に入れた仕事をされているなあ、と。

ブライアン:そうかもしれません。たぶん、そうだと思います。

「ほぼ日」オフィスにて。

糸井:事業を説明するときにはB to Bの要素が大きいけれど、やっていることはグレイトフル・デッドと変わらないんじゃないかなって。

ブライアン:オモシロイ! それは正しいです。B to Bとはいえ、けっきょく購入を決めるのは人間ですからね。すべてのビジネスはB to H(Human)、ビジネスto人間であるべきですね。

糸井:B to H! そして最終的にはH to H、人間対人間ですよね。

(次回へ続く)

構成:崎谷実穂