カタールと外交関係を維持するイランも、サウジとの対立関係を強めています。今回の石油輸出国機構(OPEC)とロシアの原油の減産合意ではイランが減産対象から免除されましたが、将来的にカタールに次いでイランがOPECから離脱する可能性はありえると思います。そうなれば石油価格が下落し、湾岸諸国が世界に投資している資金が流出。世界の金融市場に打撃をもたらします。

「中東情勢のリスクは想像よりも高い」と語る白井氏(写真=陶山 勉)
「中東情勢のリスクは想像よりも高い」と語る白井氏(写真=陶山 勉)

 3つ目のリスクは欧州経済の不安定化です。英国のブレグジットがどうなるか見えなくなっているだけでなく、独仏政治の弱体化やイタリアの債務問題、ナショナリズムの台頭といった要因で、欧州の政治情勢が揺らいでいます。

 欧州委員会では銀行同盟と呼ぶ共通預金保険制度を、ユーロ圏ではフランスを中心に域内共通予算をつくるなどで、経済統合を強めたいという狙いがあります。しかしグローバル化や移民に対する反対の声が強まっていて、独仏の求心力も低下するなか統合が遅れる懸念があります。欧州経済は既に減速していて、こうした懸念によって統合へのマインド低下や企業の活気が落ち込む可能性があります。

 こうした中、金融政策でドル高が止まる可能性があります。これが4つ目のリスクです。欧州中央銀行は19年の後半に利上げをします。米国も19年前半にかけて利上げをしますが、利率が3%に迫り、後半には経済成長も鈍るので、金利がそれより上がらない可能性があります。世界と米国の金利差が少なくなるので、ドル安に振れ、相対的に円高になりやすくなるでしょう。

正常化の期を失した

 日本銀行としては、本音では金利を上げたり上場投資信託(ETF)の買い入れを減らしたりしたいと考えているはずです。が、ドル高が止まり米国の株価が乱高下する中で、金融政策を正常化する動きを明示的に示すのは一段と難しくなりそうです。

 現代の金融政策の制度ができた1990年代以降、世界の中央銀行の中で、これほど国債を爆買いし、株式を保有しているのは日銀だけです。国債は、貯蓄している世代に当面は支えられますが、団塊の世代が貯蓄を取り崩すようになり、外国に頼るようになってきた時に、世界の投資家が日本の状況をどう見るかは誰もわかりません。株価も日銀の買い入れで何とか持ちこたえている状況です。日銀の財政緩和は、これらのリスクを先送りしているのです。