
「日本イノベーター大賞」(主催:日経BP社)の受賞者の素顔を紹介する連載の第3回は、菓子スタートアップBAKE(東京都港区)の創業者、長沼真太郎会長。幼いころから菓子業界に関心を持ち、2013年に「1ブランド(店舗)1商品」を特徴とする同社を立ち上げた。
北海道の原材料を使ったチーズタルトなどの菓子店は、工場から送った半製品を店舗で焼き上げる。現場では簡素な運営に徹することで、廃棄率や人件費比率を抑える。創業4年半で香港やベトナムなど世界7カ国・地域に進出。長沼氏は今年8月会長に就任し、現在はより「こだわりの原材料」の開発に奔走する。
(聞き手は庄司容子)
<表彰式に読者の皆様を無料でご招待>
表彰式は12月5日(火)午後5時から「コンラッド東京」(東京都港区)で開催いたします。観覧ご希望の方は、以下のURLからご応募いただけます。定員(200人)に達し次第、締め切らせていただきます。
http://business.nikkeibp.co.jp/innovators/


創業4年半で海外を含めて60店舗以上に増えました。急成長の原動力はどこにあるのでしょうか。
長沼真太郎・BAKE会長(以下、長沼):1ブランド(店舗)1商品に絞ることで、店舗のオペレーションが簡単になりました。職人を集める必要はなく、スタッフのトレーニングなどもシンプルです。店舗面積も小さくて済むので出店のスピードは他社に比べて速いと思います。
1店舗1商品に絞る利点は何ですか。
長沼:まず、その商品について、とことんこだわるようになることですね。チーズタルトならばタルト生地の厚さはどうするのが一番おいしいのかとか、細部までこだわり、おいしさに磨きがかかります。
それは、店舗のスタッフも同様です。スタッフは商品に詳しくなるので接客の質が上がります。商品の廃棄率はほぼゼロ。売り上げに占める人件費の比率は同業だと一般的には18~20%ですが、BAKEの場合は10%以下です。
![[ながぬま・しんたろう]<br />1986年生まれ。2010年3月、慶応義塾大学商学部卒。丸紅を経て11年に父が経営する北海道の洋菓子の有名店きのとやに入社。写真入りケーキのネット販売を始め、13年4月にBAKEを設立。14年2月にチーズタルト専門店の1号店を東京・新宿に開いた。(撮影:村田和聡、以下同)](https://cdn-business.nikkei.com/atcl/interview/16/112200024/112200003/p2.jpg?__scale=w:500,h:333&_sh=0cb0e306d0)
1986年生まれ。2010年3月、慶応義塾大学商学部卒。丸紅を経て11年に父が経営する北海道の洋菓子の有名店きのとやに入社。写真入りケーキのネット販売を始め、13年4月にBAKEを設立。14年2月にチーズタルト専門店の1号店を東京・新宿に開いた。(撮影:村田和聡、以下同)
この事業モデルはどのように思い付いたのですか。
長沼:2012年の夏に、実家が経営する菓子店きのとやの新千歳空港店を任されました。その店では当初、10種類ほどの菓子を販売していたのですが、商品がたくさんありすぎて何を売りたいのか、自分でもわからなくなっていました。
そこで、「商品の中で、心から売りたいものは何か」と、従業員に聞いてみたんです。そうしたら10人全員がチーズタルトだと一致しました。そこで、チーズタルトだけを売る店舗に変えようと思い切りました。
そこから売り上げがどんどん伸びていったんです。チーズタルトしか売るものがないから、どうしたら美味しくなるか、どうしたら美味しさがお客様に伝わるか、見せ方はどうするか、などをとことん追求した結果、マジックが起きました。
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