道脇:2012年、経産省の戦略的基礎技術高度化支援事業(サポイン)に採択され、量産技術の開発に着手します。しかし、量産技術開発には大きな設備が必要となるのですが、僕らにはその設備を置く場所がありませんでした。ちょうどその頃、付き合いのあった金属製品加工会社が第二工場を建設するということで、川越市に工場を建て始めたところでした。早速、その会社の工場を一部間借りさせていただけることになり、第4号ラボとしました。

 こうして、僕らはL/Rネジの大量生産に必要な技術を片っ端から開発していきました。難題が現れる度に、発明に次ぐ発明をし、また寝食を忘れた研究に継ぐ研究を重ね続け、規格化と同時に量産化を推し進めて行きました。

しかし慢性的な資金不足が続いており、助成金や賞金、そして道脇氏のポケットマネーで会社を回していくのも厳しくなる。そんななか、初めて増資を決意する。

道脇:新しいことを始めるのに最も大事なことは、やり遂げようとする意思です。これがあれば、多くの困難を乗り越えられるからです。しかし、お金も重要ですね。カネ無し、学歴無し、緩み無しとは言っておりましたが、アイデアがあって、やりきる根性も情熱もあるのにお金が無いというのは何とも歯がゆいものです。

 そんな中で、増資を考えはじめます。国内外の色々なVCや事業会社から多数の声はかかっていましたが、全て丁寧に断ってきていました。第三者割当増資をすると会社の「色」が変わってくるわけですが、色をつけるならまずは、「日本の色」をつけたいという思いがずっとありました。やはり日本という立地で生まれていますし、ネジは産業の根幹となる要素技術です。ものづくり日本の発展的承継という意味でも、日本の色に拘りました。

 結果、2014年7月に産業革新機構と三菱UFJキャピタルから3.5億円の第三者割当増資を実施し、引き受けて頂くことになりました。一般的なVCの投資回収スパンは3〜5年程度ですが、僕はネジロウの事業は100年事業であり相容れない部分もでてくると懸念していたんです。産業革新機構の担当者はこの点を理解してくださり、「こういう国家的な事業となり得る投資こそ、我々がすべきこと」と言ってくださいました。

 

ようやくネジの規格化に成功

 2014年に日経産業新聞の1面に緩まないネジについて取り上げられると、全国から問い合わせが殺到しました。その中の一社が井上特殊鋼さんです。先日大型L/Rネジの規格化を達成しましたが、ここに至るまでの開発支援をしてくださいました。(詳細は連載1回目を参照)

 2015年5月にはさいたま技術研究所を開所しました。研究所の立ち上げや第三者割当増資、井上特殊鋼さんの支援などを背景に、開発速度は約50倍にも上がりました。これにより、外部協力に頼り切っていたテストピースや治具の製作を、全て自前で用意することにも成功しました。社外でしかできなかった各種試験も社内で出来るようになったのです。

 そして先日発表したばかりですが、2年かけてようやく大型L/Rネジまでを取り込んだ呼び径N1~N100までのL/Rネジの規格化を達成しました。これからテストマーケティングを経つつ、いよいよ本格的に外に販売を始めて行く計画です。

次なる挑戦はネジのIoT化

 実はすでに次に向けた動きも始まっています。

それは、緩まないネジの「Internet of Things(モノのインターネット化)」を目指す事業です。ネジが緩まないので、橋梁や鉄道などのインフラに使用すれば、正確なデータを恒久的に取り続けることができます。振動や応力データなどを元に次の点検時期が分かったり、故障や不具合、交換すべき部品や部位が判明したり、リアルタイムの渋滞状況がわかったりと、活用方法は無数にあります。

 実はネジのネット化も20年ほど前、つまり大事故によってL/Rネジのアイデアを発明したすぐ後に同様の構想を抱いていました。様々な環境が整ったことでようやくその時代が到来したと認識し、数年前から実現に向けて動き始めています。