問い合わせ殺到するも対応できず

道脇:賞を受賞しメディアの露出も増えてくると、徐々に「L/Rネジを欲しい」という連絡が増えてきました。産業機械用の設備など本当に限られたところにだけ試験設置していましたが、僕としては規格化できていないものを普及させたくないという思いが強くあり、ほとんどの申し出を断っていました。どこから聞きつけたのか、海外の企業からも連絡がありました。ドイツの鉄鋼メーカーから「テスト用に10万本欲しい」と言われた時は驚きました。この時はまだ、テストピースを日に数本しか造ることができなかったので、10万本など到底達成できない数字です。丁重にお断りしたら「それなら1万本でも」と食い下がられ、それも無理ですと断りました。最終的には「10本でも1本でもいい」と言っていただきましたが、まだ規格もできていない状況でお出しすることはできないと考え、丁寧に伝えてご理解いただきました。この頃は対応したいけれど作れない歯がゆさを感じ続けていましたね。

新技術開発財団の助成に採択されたことで、規格化に向けた開発が加速する。しかし、あまりにも特殊な構造のネジ山であるがために、加工のための設備も一から開発しなくてはならなかった。

道脇:切削加工するための刃物から始まり、その刃物の刃を削るための砥石まで、どのような設計にしなくてはならないか考える必要がありました。完成しても、刃物は狙ったとおり出来ているか、テストピースはどうかなど、細かく精密測定しなくてはなりません。さらに、こうして出来たテストピースはどれくらいの強度があるのかも試験してみないといけない。試験するには試験装置が必要で、それには試験装置もジグも無い。そう思って一から開発しようとすると、本当に時間がかかってしまうのです。

 これらをいちいち全て外注していたら、お金も時間も幾らあっても足りませんし、外注していたら経験もノウハウも蓄積出来ません。一般的な物を作ろうとしているなら外注の方が安く、速いでしょうが、僕らが作ろうとしていたのは今までに全く無いモノです。安易に外注することも出来ないうえ、引き受けてくれるところも引き受けられるところも無いのです。何も無いところから何かを生み出すということは、こういうことなのですね。このように多くの困難を乗り越え、小型~中型のL/Rネジにおける規格化を図って行きました。

 こうやって振り返ると、2011年は僕らにとっては大きな1年でした。いくつも賞を頂いたと同時に、3月に発生した東日本大震災で橋梁や建物などの多くの建造物が被災し破壊されているのを目の当たりにし、緩まないネジの重要性を改めて再認識したのでした。

当時、本社をおいていた東京都立産業技術センターの試験場を借り、トルクの軸力を図る試験を実施。すると、ネジが試験装置から外せなくなってしまった。センターのスタッフ立会いのもと、電動サンダーで削り取ろうとしたところ、試験装置が壊れるとのことで手鋸で切ることに。一日がかりで取り外したものの、その後試験場からは出禁に。