画一的だったキャリアパス

平田:先ほど「復帰するのは不安だけど、まずは現場がある」と仰っていましたが、ワーキングマザーのその先のキャリアパスもあるのですか?

重田:当然ありますが、長い道のりになってしまっています。

 短時間勤務をする方は、お子さんが小学生になるまでは大抵、前勤(早番)のシフトを中心に取るんですね。百貨店は夜の8時や9時まで営業していますので、最後まで残れないとリーダー業務が経験できません。その方たちには、なるべく短時間でも小さいリーダーをしてもらうようにはしていますが、フルタイムに戻ってもっと上のリーダーになるまでには、どうしても時間がかかります。

平田:なるほど…。

重田:短時間勤務を経てフルタイム復帰後に、課長級の店舗マネージャーをしている女性も3人いますので、道がないわけではないのですが。

平田:販売職以外の道はないのでしょうか?

重田:全社的に見ればバイイングや本部など様々な仕事はありますが、皆さんがそこ経験できるわけではないので、大多数は店頭や外商などに携わってきました。これはワーキングマザーに限らず、男性も同じです。

平田:というと、これまではみなさん入社すると、一律に店頭販売からスタートして、途中で運良く本部に異動したり、頑張ってマネージャーにステップアップしたりする方以外は、基本的にはずっと現場で接客をされてきた、と。

重田:学卒の正社員は大体が2~3年するとリーダーの下の小さなリーダーになって、その後も少しずつステップアップするのですが、人数が人数なだけに、40代で現場のリーダーやサブマネージャーという方もたくさんいます。

平田:ずっと同じ売り場ですか?

重田:売り場は変わるケースも多いのですが、百貨店の中のごく一部の売り場のローテーションなので、変わり映えはしにくいかもしれません。弊社の社員が販売を担っている売り場は、ほんの一部の婦人服や紳士服、自主事業と言われる雑貨類、靴や家庭用品などに限られています。

 昔であれば、美術や宝飾の売り場に異動することもあって、専門知識が必要なので一生懸命覚えたりとか、画家の先生と仲良くなったりして、その道のエキスパートに育つというキャリアもありましたが、今はそういう売り場はお取引先にお任せしていますので。

 今後、ビジネスモデルをテナント運営にシフトしていく中で、私たち人事も「多様なキャリア」というテーマをもって配置異動を行い、従業員が自分の適性を見つけながら成長していくということを目指していかなければと考えています。

両立支援制度の“功罪”

小野寺:今後、前半でお伺いしたように、接客販売からテナント運営へビジネスモデルが移行し、プール人材をグループ内で配置異動させていく、とすると、6年間の育休を経た女性は浦島太郎状態になって、復帰のハードルが高くなると想像されます。

 あえてきつい言い方をしますと、「6年間の育休制度」というのは、取得する社員の方に対して、「戻ってきてほしいけど、そんなに高度な活躍は求めてないよ」というメッセージを出しているようにも受け止められるのではないでしょうか。サブシステムとして用意したものが、全体の枠組みの中で浮いてしまうような印象を受けます。

 本意としては、制度をどういう風に使ってもらうのがいいのかとか、活躍してほしい女性社員たちに対してこういうメッセージを発していきたいとか、何か打ち手として考えていることはありますか?

重田:う~ん、実は、人事部の中では「充実し過ぎた両立支援制度」に対する迷いも出てきています。これまでは、「とにかく辞めずに戻ってきてもらう」ことを最優先に制度を設計してきましたが、両立支援と活躍支援のバランスを取っていくのは、本当に難しいなというのが実感で。

 本来は、グループ内の様々なポジションを経験してもらうことで成長し、活躍していける能力や素質がある女性たちが、「この両立支援制度があるが故に安定志向になってしまう」。そんな傾向があることは否めません。

小野寺:率直なご回答、ありがとうございます。人材育成も両立支援も、企業、社員のために考えていくと必要だったことで、本当に難しい課題だと思います。

重田:最近は以前にも増して、育休も時短勤務も最長期間でフルに取る方が増えています。制度を活用していただけるのは決して悪いことではないのですが、早く役職に就けていくのが難しくなるので、その後のキャリアのことを考えると、ワーキングマザーの本当の意味での活躍ということにはならないのではないかという風に感じ始めています。忠津さん、どうですか。

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