意外かもしれませんが、トヨタは意思決定に関わる人たちの判断が速い。AIの自動運転などのプロジェクトに関して、何か問題があれば、常務クラスの人がすぐにミーティングを開き、解決してくれる。しかもいったんやろうと決めたことに関して、裏切ったり、はしごを外したりしません。

 我々には守りたい領域があります。当社に近づく企業の中には、全部を囲い込みたいというケースもありますが、それでは協業は進みません。我々も会社を大きくしたい。トヨタの場合、我々の守りたい自由度を保ったまま、一緒にできるやり方を探してくれます。我々が成長したい領域は、最大限尊重してもらっています。

プリファード・ネットワークス 西川 徹 社長兼CEO
2014年にAIベンチャーを立ち上げ、トヨタとは15年に資本・業務提携。AIを使う自動運転技術を共同開発(写真=栗原 克己)

 トヨタの幹部からは「変わらなければならない」という強い意識を感じます。世界を代表する自動車メーカーですが、もともとは自動織機の会社でそこからクルマに参入した。そこにトヨタの大きな変革点がありました。だから事業を成長させるためには変化する必要がある。自動車産業全体がピンチでも、「勝っていくぞ」という意識がものすごくある。「このままではやばい」という危機感も本当に強い。日本のほかの大企業はそうではありません。

 トヨタ全体が変わっていくフェーズにあります。ものづくりのやり方をどんどん変えないといけない。でもトップの意識は変わっても、現場はついてきているのか。危機感が本当に全体に浸透しているのか。まだまだこれからだと思う部分も正直言ってあります。

 今までの技術を守りたい現場の人がいる。でも事業のトップは新しい技術で変えていきたい。現場とトップの意識がずれるときがある。「新しいものを入れていかないといけない」と上の人が言って、調整しないと実現できないことは少なくありません。

 AI分野の新しい技術は(トヨタの)現場の人でも分からない。そこで上司とのキャッチボールが必要になって意思決定が遅れてしまうことはあります。トヨタに限らず、階層が深い会社にはトップと現場のスピード感にギャップが存在します。

 こうしたギャップを埋めていかないと、新しいスピード感のあるベンチャーには勝てません。自動運転では米グーグル傘下のウェイモや中国の百度(バイドゥ)もある。だから我々も言いたいことはガンガン言います。

 でも「なんだこの下請けふぜいは」となったりしない。はたから見たらなんて失礼なと思われるかもしれませんが、目標は自動運転で勝っていくこと。安全な自動運転技術をきちんと出していくことです。現場は仲間であり、そう思ってやっている。伝統的な会社は上の顔をうかがいながら進めるのは宿命ですが、そうならないような仕組みを一緒につくろうとしています。

「東京モーターショー2017」併催イベントとして、「クルマの未来」を見通す大型イベント「FUTURE MOBILITY SUMMIT : TOKYO 2017 DAY2」を東京ビッグサイトで開催します。

開発が加速する自動運転技術、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッドカー)に象徴される電動化と内燃機関の性能向上について、リーディング企業が取組みの最前線を語り、2020年およびそれ以降のクルマの姿を探ります。

完成車や部品などで世界を牽引するトヨタ自動車や日産自動車、ホンダ、マツダといった主要メーカーが一堂に登壇するのに加え、SUBARU社長の吉永泰之氏が対談形式でこれからの方向性を語ります。また、つながるクルマに不可欠な常時接続を実現する通信技術について、NTTドコモ社長の吉澤和弘氏も講演します。ぜひ、ご参加ください。