トヨタ社員へ、「モリゾウ」の叫び

 詳細はぜひ特集の中身をお読みいただきたいが、ここで少し、その巨人を率いる人物、豊田章男社長について触れたい。

 時代の変化に対応できる組織に生まれ変われなければ、トヨタに未来はない――。取材の中で見えてきた「豊田章男像」は、社員の誰よりも体を張って「変わろうよ」と叫んでいるようだった。

 「キュルキュルキュルキュル」

 2017年9月19日、東京・お台場にあるショールーム「MEGA WEB」。この日、フィギュアスケート選手のようにドリフトを実演していたのは、テストドライバーの「モリゾウ」。章男社長が持つ、もう一つの顔だ。

愛車「86」でドリフトを披露する前、メディアの要望に応えてポーズを取る豊田章男社長
愛車「86」でドリフトを披露する前、メディアの要望に応えてポーズを取る豊田章男社長

 トヨタはこの日、スポーツカーブランド「GR」の投入を発表したのだが、章男社長が来ることはメディアに公式には知らされていなかった。

 記者自身も知らなかったのだが、発表後、モリゾウさんのドリフト実演があると聞き、喜び勇んで見に行った。これまで幾度となく披露されていたようだが、一度も見たことがなかったからだ。

 そしてスマートフォンで撮影したのが下の動画。

 動画では分かりづらいが、スポーツセダン「86」の後輪からは白い煙が立ち上り、辺りにはタイヤの焦げる臭いが立ち込めていた。「怖い」。喜び勇んで行ったはいいものの、その迫力に思わず後ずさりした。

 「横に乗せてもらえばよかったのに」。後で編集長にそう言われたが、正直、薦められてもビビッて乗れなかったと思う。それほどドリフトは迫力があった。

 この光景を見た記者には、章男社長がトヨタ社員たちに向かって、こう叫んでいるように見えた。

 「めちゃくちゃやっていいんだ。面白いことやって、楽しみながら、いいクルマを作ろうよ」。

少しだけ深い層にある「断片」

 長く記者をやっていて思うのは、「企業も人と同じ」ということだ。生まれも育ちも違えば、そこで培われた性格も考え方も違う。他人を深く理解するのには時間がかかるのと同じように、ちょっと取材をしたくらいでは企業の本当の姿は見えてこない。

 日経ビジネスが100人のインタビューをしようと考えた理由は、そこにある。もちろん、今回の特集で全てを語り尽くせているとも思わない。これもまた「断片」に過ぎないからだ。

 ただ言えるのは、断片は断片でも、日々のトヨタのニュースを追っているだけでは見えてこない、少しだけ深い層にある断片だということ。そして、その解釈も、読者の自由でいいのだと思う。

 皆さんは100人の声から、どんなトヨタを発見し、自社にどう役立てるだろうか。

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