LINEの100%子会社、LINE Business Partners は企業や事業者向けにビジネスアカウント「LINE@(ラインアット)」を提供している。2012年12月のサービス開始以来、順調に成長を続け、2017年10月には認証済みアカウント(編集部注:所定の審査を通過することで認証済みアカウントバッジが付与され、LINEアプリ内での検索結果にも露出されるようになるアカウント。一部の機能や決済手段などが拡張される)数が30万件を突破した。累計友だち数は1億7000万人を超える。情報発信に加え、店舗の集客や販売促進を支援するツールとして利用が進んでいる。

 LINE@は今やガラケー時代のメルマガに代わり、「スマホ時代のコミュニケーションツール」として顧客企業からの支持を増やしており、LINE Business Partnersの長福久弘社長は「人と人、人とモノ、人とサービスの距離を縮めることを重視している」と話す。「エンゲージメントマーケティング」を提唱するマルケト社長の福田康隆氏が、エンゲージメントマーケティングのツールとしてのLINE@の可能性を長福社長に聞いた。

クイックレスポンスの特性を商機に

福田:「LINE@」は一括配信のメルマガに置き換わるツールです。これにはOne to Oneマーケティングを促進するという特徴がありますね。

長福:実は、LINE@も当初はメッセージの一括配信機能しかありませんでした。一般向けのLINEと同じように「1:1トーク」の機能が欲しいという要望を受け、機能を実装したのです。私たちが描くビジョンは、LINE@を固定電話と並ぶような存在にすることです。プライベートでは電話かLINEですが、ビジネスでも電話かLINEという世界を実現したいと思っています。

<span class="fontBold">LINE Business Partners社長<br /> 長福 久弘(ちょうふく・ひさひろ)氏</span><br /> 2005年アドバンテージ、06年マジックアイスジャパンを経て、09年ライブドア(現LINE)に入社。13年「LINE@」ビジネス拡大のため、LINE Business Partnersに出向し、営業、マーケティング、サポート部門を統括。14年同社代表取締役社長に就任。(写真:清水盟貴)
LINE Business Partners社長
長福 久弘(ちょうふく・ひさひろ)氏

2005年アドバンテージ、06年マジックアイスジャパンを経て、09年ライブドア(現LINE)に入社。13年「LINE@」ビジネス拡大のため、LINE Business Partnersに出向し、営業、マーケティング、サポート部門を統括。14年同社代表取締役社長に就任。(写真:清水盟貴)

 成功事例も出てきました。中古車検索サービスのグーネットには、「電話する」「メールする」「LINEする」の3つのボタンがあります。中でもLINE経由の問い合せからのコンバージョン率が特に高く、名古屋市のある販売店では月7台の販売実績中6台がLINE経由でした。電話には会話をしないといけないという心情的なストレスが少なからずありますが、LINEだと気軽にできます。また、メールでは返信に時間がかかりますが、LINEならクイックレスポンスで軽いコミュニケーションができます。

福田:そのほかにもLINE@の特性をうまく生かせるような事例はありますか。

長福:例えば「雨の日クーポン」は、瞬時に売り上げが増え、来店したお客様にもメリットを感じていただける集客方法だと思います。

LINE@の画面イメージ。友人同士のLINEのやり取りと同様に、顧客と接点を持てる

 リアルタイム性という意味では、徳島県警の不審者情報提供の事例も参考になります。「この地域で身長このぐらいの不審者が出た」という情報は、親御さんがリアルタイムで知りたいものです。その日の夜に届くようでは遅いですし、翌日ではもっと遅い。家で落ち着いた状態で見るメールで送るにはタイミングが悪いのですが、LINEならすぐに確認できます。

 また、消しゴムはんこ制作の「さくはんじょ」の場合、以前はお客様とのデザインや入金確認などのやり取りをメールで行っていました。LINE@に変えてからは、3日かかっていたやり取りが1日になったそうです。日常のコミュニケーションツールとしてLINEが来たら見ることが習慣になっているため、必然的にコミュニケーションのレスポンスが早くなり、効率化できたのでしょう。

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