必要なのは社員のマインドセットの変換

福田:多くの企業は組織やプロセスが縦割り構造のままであるため、本当の意味での顧客価値提供ビジネスへの転換に苦労していると感じます。既存事業部の枠を超え、各分野が持つニーズへの対応を目指す「One Konica Minolta」を掲げ、大胆な組織編成や戦略実行を行う狙いは何ですか。

山名:変革は容易にできるものではありません。これまで3年間の準備期間を経て、2017年度からの新しい中期経営計画で完成させるつもりです。現在の市場における課題を解決するのではなく、まだ見えない潜在的な課題を探し出して解決する「課題提起型デジタルカンパニー」を目指していきます。

「『課題提起型デジタルカンパニー』を目指す」と話すコニカミノルタの山名社長(左)(写真:清水盟貴)
「『課題提起型デジタルカンパニー』を目指す」と話すコニカミノルタの山名社長(左)(写真:清水盟貴)

 戦略実行については、多様性があり専門性の高いチームを独自に編成し、世界の市場に近いところでソリューションを開発・提供し、成功体験を作りたいと考えています。戦略を転換しないと、製造業は価格競争で消耗するだけです。ですから、価値を生み出す知恵を新しい競争の源泉にしたいのです。変革への道のりは長くなりますが、組織文化やそこで働く人のマインドセットを変えるところから粘り強くやっていきます。

福田:コニカミノルタと同様に、規模が大きく過去に成功した企業がマインドセットを変えるには大変な努力を要すると思います。社員の意識改革には地道な取り組みしかないのかもしれませんが、これまで培ってきた強みを体系化した「6values」や、成長戦略の中核を担う組織として設立したBusiness Innovation Center(BIC)はそのための「仕掛け」ですか。

山名:実際の戦略実行では、この2つが成功の鍵になるでしょう。コニカミノルタは、将来の事業創出における必要性を見据え、数々のM&A(合併・買収)を手掛けてきました。多様な文化と価値観を持つ人材がグループの一員として行動するには、「Customer-centric」や「Innovative」「Passionate」といった6つのバリューを判断基準として浸透させることが必要です。

 BICは、コニカミノルタの技術や文化にこだわらず、顧客の視点で新しいビジネスを創出するための組織です。当社にはない知見を持つ人材を世界5拠点に集め、設立しました。BICの活動は日本の社員にも刺激を与えているようです。若手社員を海外に派遣する計画も進めており、良い経験の場になることを期待しています。

 それから年数回は「Global Strategic Council」の場を設け、グローバルの幹部とともに、戦略を実行している現場の生の声を聞き、グループ戦略を練り上げることを大切にしています。

福田:デジタルの特徴はスピード、スケール、可視化の3点だと考えていますが、この特徴を取り入れるにはバランス感覚を持つ人材が必要です。コニカミノルタの技術の将来展望とその実現に、どんな人材が必要になると考えていますか。

山名:成功に向けて人材の獲得と社内での育成が課題になるのは間違いありません。本来の人間の能力は、会社ではなく世の中に貢献したいという強い気持ちに基づくものであるはずです。世の中の課題を「自分ごと」として捉え、主体性を持って変革の先頭に立つ気概を持ち得るか。創造性は、自分とは異なる価値観を持つ人と切磋琢磨することで向上するものです。常に学習し、他の人を巻き込む力を持つ人材を育てていきたいと思います。