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 無印良品、ファミリーマート、パルコ、西武百貨店、西友、ロフト、そして外食チェーンの吉野家--。堤清二氏が一代でつくり上げた「セゾングループ」という企業集団を構成していたこれらの企業は、今なお色あせることはない。

 日本人の生活意識や買い物スタイルが大きな転換期を迎える今、改めて堤氏とセゾングループがかつて目指していた地平や、彼らが放っていた独特のエネルギーを知ることは、未来の日本と生活のあり方を考える上で、大きなヒントとなるはずだ。そんな思いを込めて2018年9月に発売されたのが『セゾン 堤清二が見た未来』だ。

 本連載では、堤氏と彼の生み出したセゾングループが、日本の小売業、サービス業、情報産業、さらには幅広い文化活動に与えた影響について、それぞれの業界に関わる人々に語ってもらう。

 連載15回目に登場するのは、作家の原田マハ氏。セゾングループ傘下の西武美術館(のちのセゾン現代美術館)は、いち早く現代アートの展覧会を開催。日本に現代アートが根づく素地をつくった。そして現在、アートの世界で活躍する人にも大きな影響を与えている。かつてMoMA(ニューヨーク近代美術館)に勤務し、現在はアートに関連する著作を数多く世に送り出す作家・原田マハ氏もその一人だ。セゾングループの取り組みが原田氏に与えた影響や、堤清二氏が日本に遺したものについて話を聞いた。(今回はその後編)。

作家の原田マハ氏(撮影/竹井俊晴、ほかも同じ)

インタビューの中編(「誇り高き芸術家たちのパトロンだった堤清二」)で、原田さんは平成最後の年、アート界では1980年代が改めて再評価されているとおっしゃいました。最近では現代アートの展覧会も増えています。

原田氏(以下、原田):いまではラッキーなことに、皆さんの現代アートに対するアレルギーが少なくなっています。

 セゾン以降、30年、40年の時間をかけて、徐々に現代アートは広まっていきましたし、ある時を境に、デザインとクリエーター、アート、アーティストの境界線が、いい意味であいまいになりました。

 それによって、「これってアートでしょう」とエクスキューズできる時代がようやく来またように感じます。

確かにセゾンはデザインとアートのボーダーラインを消しましたように感じます。広告もしかり。

原田:セゾンがそこの境目のところを攻めた結果だと思います。そんなことをする企業は、なかなかありませんでしたね。

 セゾンによって壁を突破したというクリエーターは多いのではないでしょうか。私もずいぶん励まされました。

 もちろんセゾンが私に対して具体的に何かをしたわけではありません。

 けれど、私を含む当時の多くの若者たちが、セゾンによってすごく背中を押されたというのは、間違いないと思います。それをベースに今、日本各地で現代アートを扱う美術館やアートスペース、あるいはイベントが次々できています。

 私も含めて、彼らはみんな、セゾンのフォロワーだと思います。