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ヨーゼフ・ボイスの展覧会もセゾンが

堤さんはそういった海外のパトロンとどう違うのでしょうか。

原田:堤さんがどの段階で現代アートにご興味を持たれたのか、私は詳しくは知りません。

 けれど、現代アートに特化したパトロンになるということ、つまりユニークなものを目指すというセゾンの会社としての方針と、現代アートを重ね合わせたのは非常に正しいと思います。

 結果論かもしれませんが、そういう意味でも非常に見る目のあった方だなと思いますし、大変ユニークな方がパトロンになったんだなと思いますね。堤さんは結果的に、すごくネームバリューの出るアーティストの作品もたくさん買っていますから。

 西武美術館は、「安井賞」という平面美術のアーティストの登竜門といわれた賞も長く設けていました。私はこの安井賞を毎年見に行っていました。

 「平面のアーティストに限る」というのも面白かったし、現代アートの芥川賞みたいな登竜門的賞でした。こういうことも、ちゃんとやっていらしたんです。西武美術館では、クリエイティブ・ディレクターの小池一子さんやキュレーターの方々が、まだ発掘されていないけれど、この人すごい、絶対にかっこいい、というアーティストを引っ張ってきていました。

 例えば(ドイツの現代美術家である)ヨーゼフ・ボイスの展覧会を開いたのも西武美術館でした。

 実は私、その展覧会に行ったんですね。何だかよく分からず、「ボイスって誰?」といった感じで(笑)。今では現代アートの世界でヨーゼフ・ボイスといえば、伝説のスーパースターです。「あのボイスの展覧会に行ったんですよ」と、とある現代美術館のキュレーターに話したら、「ええっ、あの展覧会に行ったんですか」と驚かれました。

 私よりも後の世代に現代アートのキュレーターになった人たちにとっては、その展覧会は伝説になっているんです。その時、彼らはまだ10代とかもっと若かったくらいですから。

 私がそれを見ることができたのは、セゾンがボイスの展示会を開くほどに見る目があって、さらに作品を持ってくることができる力もあって、決断力もあったから、でしょう。ただそれでも、やっぱり展示会にはあまり人が多くなかったけれど(笑)。