クリエーティブなものにカネが流れない

J-WAVEという名前は(セゾングループが手掛けた音楽と映像ソフトの大型専門店である)「WAVE」が由来だったという説もあります。
大倉:最初はFMジャパンという名前で開局すると言われていました。その時は「えーっ」と思いました。あまりにもベタで、「何だそれ」と。その後で「J-WAVE」という名前が出てきましたが、その経過は僕はよく分かりませんでした。
ただ、当時の「WAVE」といえばワールドミュージックが揃っている店として知られ、僕はそういうのが好きだったので、よく通っていました。WAVEは格好良かったんですよ。手書きのPOPがあったりして。
今では書店の売り場などで当たり前のようになっていますが、当時、手書きのPOPで店員に推薦されるとつい買ってしまう、という流れをつくったのはWAVEだったんじゃないかな。
WAVEの店員は非常に熱心に、自分が推すCDについてのPOPを書いていましたから。J-WAVEでも、ワールドミュージックをうまく取り入れていましたね。
WAVE以外のセゾングループの業態については、どんな印象がありましたか。特に大倉さんはJ-WAVEで「BOOK BAR」という、書籍を紹介する番組を10年以上続けています。(セゾングループの書店チェーンだった)リブロなどに思い入れはありますか。
大倉:リブロは特徴が際立っていました。新刊の売れ筋をばーんと積み上げる雰囲気ではありませんでしたが、その代わりに写真集が非常に充実していた。ほかの書店とは雰囲気が相当違っていましたね。「ちゃんと選んで置いているよ」というのが伝わってくるというか、「こんなのもあるぞ」といった感じはすごくありました。
WAVEしかり、リブロしかり。かつての方が、クリエーティブなものに対して、企業も消費者もお金をかけていたような気がします。特に広告はその傾向が顕著だったのではないでしょうか。
大倉:昔は広告を打てば、ぽーんと売上高が跳ね上がりました。
けれど広告費がどんどんとネットに流れていって、雑誌も新聞もラジオも苦しくなり……。ラジオもテレビも広告収入が落ち込み、その分は、ネット広告に流れています。
ただネット広告で「おお、ものすごいクリエーティブなものを見たぜ!」と感動するものって、あまりありませんよね。
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