クリエーティブなものにカネが流れない

J-WAVEという名前は(セゾングループが手掛けた音楽と映像ソフトの大型専門店である)「WAVE」が由来だったという説もあります。

大倉:最初はFMジャパンという名前で開局すると言われていました。その時は「えーっ」と思いました。あまりにもベタで、「何だそれ」と。その後で「J-WAVE」という名前が出てきましたが、その経過は僕はよく分かりませんでした。

 ただ、当時の「WAVE」といえばワールドミュージックが揃っている店として知られ、僕はそういうのが好きだったので、よく通っていました。WAVEは格好良かったんですよ。手書きのPOPがあったりして。

 今では書店の売り場などで当たり前のようになっていますが、当時、手書きのPOPで店員に推薦されるとつい買ってしまう、という流れをつくったのはWAVEだったんじゃないかな。

 WAVEの店員は非常に熱心に、自分が推すCDについてのPOPを書いていましたから。J-WAVEでも、ワールドミュージックをうまく取り入れていましたね。

10年以上続くJ-WAVEの人気番組「BOOK BAR」。その中で取り上げた1000冊あまりの本の中から厳選した50冊をまとめた書籍が『BOOK BAR―お好みの本、あります。』だ
10年以上続くJ-WAVEの人気番組「BOOK BAR」。その中で取り上げた1000冊あまりの本の中から厳選した50冊をまとめた書籍が『BOOK BAR―お好みの本、あります。』だ

WAVE以外のセゾングループの業態については、どんな印象がありましたか。特に大倉さんはJ-WAVEで「BOOK BAR」という、書籍を紹介する番組を10年以上続けています。(セゾングループの書店チェーンだった)リブロなどに思い入れはありますか。

大倉:リブロは特徴が際立っていました。新刊の売れ筋をばーんと積み上げる雰囲気ではありませんでしたが、その代わりに写真集が非常に充実していた。ほかの書店とは雰囲気が相当違っていましたね。「ちゃんと選んで置いているよ」というのが伝わってくるというか、「こんなのもあるぞ」といった感じはすごくありました。

WAVEしかり、リブロしかり。かつての方が、クリエーティブなものに対して、企業も消費者もお金をかけていたような気がします。特に広告はその傾向が顕著だったのではないでしょうか。

大倉:昔は広告を打てば、ぽーんと売上高が跳ね上がりました。

 けれど広告費がどんどんとネットに流れていって、雑誌も新聞もラジオも苦しくなり……。ラジオもテレビも広告収入が落ち込み、その分は、ネット広告に流れています。

 ただネット広告で「おお、ものすごいクリエーティブなものを見たぜ!」と感動するものって、あまりありませんよね。

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