堤さんでも今の時代は見通せない

堤さんのようなアントレプレナーシップを今、実践している経営者は誰だと思いますか。

奥田:堤さんが実践したことは、我々のような古い時代の人間にとってロマンがあることでした。

 一方で、今の経営者が目指すものはもっと違うのかもしれませんね。例えば「メルカリ」にはロマンはありません。実生活そのものです。それでも人々の生活は便利になっていて、多くの人に受け入れられています。

 私の言う「古い時代のロマン」というのは、「今日よりも明日がよくなる」という価値観とも言い換えられます。それは何も量的なことばかりではなく、質的にも良くなるだろうと思っていました。けれど、それはもうあまり期待できません。

堤さんは1970年代、1980年代という経済成長期、もう一歩先のいい生活を消費者に見せたわけですね。

奥田:そうだと思います。それも堤さんは、量だけではなく、質的にどう変わっていくかということを言っていました。堤さんに先見性があったのは、我々よりも先に「モノよりコト」の時代になると見ていたからです。

 ただ繰り返しますが、そんな堤さんでも今ほどの変化は予見できなかったと思います。この直近十数年の変化は、もっとドラスチックで、次元が変わったようなインパクトがありますから。

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