無印良品、ファミリーマート、パルコ、西武百貨店、西友、ロフト、そして外食チェーンの吉野家--。堤清二氏が一代でつくり上げた「セゾングループ」という企業集団を構成していたこれらの企業は、今なお色あせることはない。

 日本人の生活意識や買い物スタイルが大きな転換期を迎える今、改めて堤氏とセゾングループがかつて目指していた地平や、彼らが放っていた独特のエネルギーを知ることは、未来の日本と生活のあり方を考える上で、大きなヒントとなるはずだ。そんな思いを込めて2018年9月に発売されたのが『セゾン 堤清二が見た未来』だ。

 本連載では、堤氏と彼の生み出したセゾングループが、日本の小売業、サービス業、情報産業、さらには幅広い文化活動に与えた影響について、当時を知る歴史の「証人」たちに語ってもらう。

 連載第9回目に登場するのは、作家の林真理子氏。文化人を多く世に排出したセゾングループ。作家の林真理子氏もその一人だ。セゾングループ内の西友ストアのコピーライターとして働いていた1981年、「つくりながら、つくろいながら、くつろいでいる。」というコピーで、東京コピーライターズクラブ賞新人賞を獲得。その後、堤清二氏からかけられた言葉がきっかけとなって作家を志したという。そんな林氏に経営者や文化人としての堤清二像を聞いた(今回はその後編)。

作家の林真理子氏(写真/竹井俊晴)。日本経済新聞の朝刊連載小説『愉楽にて』が一冊の単行本となって、11月20日に発売される。

堤清さんの知識や文化に対する欲求は、どこから生まれてきたのだと思いますか。

林真理子氏(以下、林):堤さんって旧制高校出身ですよね。旧制高校を出た人はちょっとすごいですよ。英語、ドイツ語といろいろな語学ができますし、哲学についても語れる。

 本物のエリートなんですね。あの人たちの文化や知識の蓄積の仕方には驚かされます。

 堤さんはそれに加えて、秋山道男さんのような、新宿のサブカルやアウトローっぽい文化にも理解がありました。すべてを受け入れて、ホンモノはおもしろがる。

 恋の噂も絶えませんでした。あれだけ忙しい中で、恋愛もしているってすごくないですか?

 やっぱり堤清二は大ブランドだったのでしょうね。現代に例えるなら誰でしょうか。大企業の経営者で、名前を言えば誰でも知っていて、教養と気品があって、カッコイイ人……いますか?

 私自身、経営ばかりやっている人は何人も知っていますし、趣味に生きている人も知っています。

 けれど、堤さんほど教養と経営能力を圧倒的に備えている人はいないと思います。どう考えてもいませんね。堤さんはすべてにおいて森羅万象でしたから。

 私は今、ある大企業の経営者と仲良くしていて、彼のアートのコレクションを見せていただいています。けれど、少しレベルが違う。やっぱり堤さんとは教養の深さが違うんです。

 堤さんは、自分で美術館を開いて、本を書いて、ロフトやセゾン劇場もつくって。やっぱり巨人だったのでしょうね。知の巨人が『ガリバー旅行記』のように、ぐんぐんといろんなものを引っ張っていったのだと思います。私たちは小人の国で、ぐいぐいと引っ張られていった。

作家としての辻井喬さんは、どのように評価していますか。