お金では買えない「センス」をセゾンが生んだ

セゾン文化の前には、そういったカルチャーはなかったのでしょうか。

:ありませんでしたよ。それまでは、誰もが生活に必死でしたから。みんなが四畳半の自宅から、1DKに住むようになった頃のことです。

 そんな時に西武百貨店が「おいしい生活。」という広告を展開しました。

 広告が本当に力を持っていて、コピーライターがスターだった時代。それまではあり得なかったことです。やっぱり仲畑貴志さんや糸井重里さんの影響力は大きかったですからね。

なぜ、セゾングループは文化を生み出すことができたのだと思いますか。

:まあ、時代背景もありますね。

 当時は新しい生活スタイルがちょうど芽生えた頃です。それがどういうものか、みんなが分からなかった時に、パルコが一挙に伸びて、「センス」という概念が出てきました。

 センスはお金では買えません。それまでの「頭がいい」とか「美人」だとか「勉強ができる」とか、そういうものとは全く別の、人を判断する価値観が生まれてきた頃です。

 スタイリストという職業が生まれて、洋服の着こなし、おしゃれな生き方がすごく問われるようになりました。

 私も含めて、当時はほとんどの人が、田舎から都会に出てきた人ばっかりでしたから、そういうものがなかなか分からなくて。みんな洋服を真似するのだけれど、分からない。当時はユニクロもないし、オシャレな既製服がとにかくありませんでした。

 そんな当時の私たちにとって、パルコに買い物に行くのは、ものすごくオシャレなことでした。「センス」という新しい価値観を教えてくれたのがセゾン文化だったのでしょうね。

 しかも堤さんは、ブランド品がもてはやされる全盛期の少し前くらいに、「わけあって、安い」というコンセプトで無印良品をつくりました。その後で「シンプル・イズ・ベスト」という言葉も生まれて。時代の先、先に、どんどんと進んでいる感じがありました。

 当時輝いた無印良品は、今も立派に残っています。これはすごいことですよね。私はあの時、無印良品がここまで長く続くとは思っていませんでした。あの頃の無印良品は、今とは品ぞろえが違っていましたから。

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