つかしんに時代が追いついた

一方で、東京の消費についてはどう思われますか。

三浦:都心とそれ以外で人種が分かれてきましたね。

 都心のタワーマンションに住んで、BMWに乗るという人はやはりいます。けれど、都心のタワーマンションに住んでいるからこそクルマはいらないという人もいる。タワーマンションもBMWも興味のない人もたくさんいて、そういう人は中央線に多いかもしれません(笑)。

 つまり、東京全体を外から見るとさほど変わっていないようだけど、内実は富と価値観とによって住む場所が分かれてきている。

 昔は港区にも貧乏な人はいたけど、今あんまりいない。貧乏な人の街をつぶしてタワーマンションやオフィスビルをつくったわけですから、貧乏な人は別の町に行くしかなくなったので。

 堤さんは、こういう東京は好きじゃないかもしれませんね。

 最近の都市計画では(1960年代に近代的な都市計画を批判した)ジェイン・ジェイコブズが人気です。堤さんが(肌着メーカー、グンゼの兵庫県尼崎市の工場跡地で街づくりをした)つかしんでやろうとしたことは、今思うと、おそらくジェイコブズ的な町づくりでしょう。

 そんなことは1986年には理解する人は少なかったはずです。街をつくって、池をつくって、赤トンボを飛ばすためにヤゴをまいたわけですから。

 それを狂気の経営だと批判した人もいましたが、そりゃ、予言者は一種そうした人ですからね。

 30年前につかしんができた頃は狂気だったけれど、今なら誰もが堤さんの意図を理解するはずです。少なくとも、建築や都市計画を勉強している学生ならね。

 今の若い建築家が発想するのは大概が堤清二的な都市計画、堤清二的な街づくりですよ。

 僕は4年前につかしんを再訪しました。面白いですね。普通のショッピングモールとは違って、商店街っぽいところがある。イオンモールとはまるで違います。昔の商店街っぽいんです。ですからきっと堤さんの思いは、ある程度、実現したのかなと思いましたね。

 しかも本当に赤トンボが飛んでいたんです。びっくりしたなあ。「堤さん、本当に赤トンボが飛んでいますよ」と天国に報告しましたよ。