堤さんが語った通りになっている

堤さんの思想には、今現在に通じているものがあったとお考えですか。

三浦:まさに今、起こっている現象を予言していますね。

 『第四の消費』が出た後、最初に僕に講演を頼んできたのは、福岡市に住み、その後五島列島に移住した「リノベーションの女王」と呼ばれていたシングルマザーの女性です。『第四の消費』を読んでとても共鳴してくれました。

 自分で実践していることが、歴史的に一種の必然であることを周りに知ってもらいたくて、僕を呼んだのだと思います。

 福岡から離島にシングルマザーで移住し、五島でリノベーションをして暮らす。そんな人が最初に講演を頼んできたというのは、なかなかシンボリックです。そのほかのリノベーション業界の草創期の面々との付き合いも、『第四の消費』から生まれましたし、ちょうど2012年頃は東日本大震災後ということもあって、新しい生き方が模索されていました。

 そこに、『第四の消費』がぴったりはまったのでしょう。

 福岡での講演に来ていた、東京から移住した女性も、「これから、福岡の田舎でシェアハウスに住んで、狩猟をして暮らします」「今日の話は大変面白くて、私がこれからやろうとするのは、まさにこれだと思いました」と言ってくれました。自分の話と狩猟生活がどう結びつくかは僕自身にも分かりませんでしたがね(笑)。

 いずれにしろ、今までのような消費社会ではない生き方をしたいと思っている人に、なぜかピンとくるものがあったようです。そういう思想の元をたどると、堤さんがいました。

 今年10月に出した新刊『100万円で家を買い、週3日働く』(光文社新書)では、第四の消費社会的な現象について、この4年くらい僕が取材を重ねてきたものをまとめています。

同書の取材の中でも、堤さんの予言が的中したことを感じたそうですね。

三浦:最後に取材をしたのが、「子供を生んでも一緒に住もう」と言っている、夫婦2組を含む7人が住むシェアハウスでした。子供を親以外の複数の大人の中で育てるとか、親の違う子供2人を同じ子供部屋で育てるとか、今までの近代家族像に縛られない発想がありました。

 彼女たちは、自分たちのつくった雑貨や食品をシェアハウスの軒先で売ったり、シェアメイトの実家の農家といかにつながったりするかなど、シェアハウスを軸とした小さな経済圏を回すことにとても関心がありました。

 小さなコミュニティと小さな経済圏。それはまさに堤さんがインタビューで話していることです。彼らは、堤清二さんの存在も思想も知らないと思うけれどね。

 堤さんがそのように予測したのは、バブル経済が完全に崩壊した後の1990年代末か、もしかすると、もっとずっと早くの1980年代だったのではないかと思います。無印良品やつかしんでの思想を考えると、それくらい早くから考えていてもおかしくはありません。