「無印良品は立派だった」
鈴木:2人だけで会うような関係ではありませんでしたが、いろいろとつながりはありましたね。堤さんは、亡くなった(日本テレビ放送網元会長)氏家斉一郎さんと大学の同窓でしたよね。ナベツネさん(読売新聞グループ本社主筆の渡辺恒雄氏)もそうだけど、氏家さんと僕は非常に親しくしていました。
だから僕は氏家さんと一緒に、堤さんの話をしたこともあります。堤さん、氏家さん、ナベツネさんの3人は、みんな学生運動をしていました。ただその中でも、一番純粋だったのが、堤さんじゃないでしょうか。思想的な意味で。
堤さんはスーパーの経営でもいろいろと新しく仕掛けていました。それはどう評価していますか。
鈴木:堤さんは、流通以外のことに対する関心が高かったのかもしれませんが、西友の経営でも、やはり自分で新しいことをやる、やってみたい、という思いがあったのでしょうね。(スーパーの成長期に)中内さんや伊藤さん(雅俊、イトーヨーカ堂創業者)に比べて、堤さんは(日本の小売業界に大きな影響力を持った経営コンサルタント)渥美俊一さんにあまり接触しなかったのではないでしょうか。
西友のPB(プライベートブランド)として1980年代に誕生した無印良品についてはどう評価していますか。
鈴木:無印良品は立派だと思いますね。あの時代に、自主MD(マーチャンダイジング)を堤さんがやらせたということは、立派だと思います。
メーカーのナショナルブランドに対抗して、小売業が自主商品を開発する動きが広がってきた時代でした。
鈴木:流通各社はヨーカ堂ならヨーカ堂とか、ダイエーならダイエーというブランドを、商品によって確立しようとしていました。ネーミングばかり優先させてしまっていましたよね。
ブランドというと、やっぱりネーミングがなくちゃ、という考え方が優先されていたんでしょうね。そんな中で、無印良品は「無印」であることを訴えた。逆を仕掛けたわけです。それは誰もが驚きましたよ。(後編に続く)
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