「いい悪い」より「好き嫌い」で消費者は選ぶ

1970年代から1980年代にかけて、セゾングループは広告業界にとってどんな存在だったのでしょうか。

仲畑:あの頃は百貨店という業種がイケイケの時代でした。情報や流行の発信で「渋谷西武」などはかなり力がありました。僕ら広告制作者の中では、西武百貨店もパルコもやっぱりいいポジションの会社でした。

 パルコは西武百貨店に先行して、結構、広告業界をかき回していたでしょう。斬新な表現を打ち出すことで。1970年代は特にパルコの広告は強かったですね。

当時はマーケティングも、それまでの「品質を訴える」性質のものから大きく変化がみられたようですね。

仲畑:「いい悪い」よりも「好き嫌い」で消費者に選ばれる時代になってきましたから。
 だから当時のセゾングループの広告は、商品のことは何も言っていない。やはりその辺は、堤さんのセンスがあるんじゃないですか。

 堤さんはそのあたりの理解力と先進性がありました。企業を好きになってもらうためにも文化的なニュアンスを大事にしたんでしょう。「文化をまとった方が企業は伸びる」という考え方でしたから。

 そして、そんな姿勢の企業は当時も少なかったですね。メーカーではできなかったはずです。どうしても製品の機能を訴求したくなりますから。クルマなら「よく走る」とか。

 当時はマーケティングの世界も大きな転換期を迎えていた。だからこそ、コピーライターが脚光を浴びやすかったのだと思います。

 「モノからコトへ」というシフトですね。広告が「コト」について話すようになると、映画などと語ることが一緒になってきます。面白さや興味、刺激……。僕たちコピーライターにとっても、とてもやりがいのある時代でした。

 もともと百貨店や流通業界はそういうものだったはずです。モノを売る「場」に、いろいろなメーカーの商品を並べるわけですから。そのパッケージをつくっていたのが小売りの役割だったわけです。

 だからこそ、流通業界は「モノ」から「コト」へシフトするのが早かった。中でもセゾングループは、堤さんの特性といいますか、彼ならではの個性が非常に強く反映されていました。老舗である三越や高島屋に対して、「内容で勝負だ。だから提案力が重要だ。それによって違いを出そう」という意識もあったのではないでしょうか。

(後編に続く)

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