クリエーターに寄り添い続けた堤清二

堤さんは、コピーライターやアート関係者など、外部のクリエーターの人たちと関係が近かったのですね。

仲畑:はい。巷で流行っている本やCDをよく送ってきてくれました。「面白い」「いいよね」というものを共有しようという気持ちがあったのだと思います。

 堤さんは常にクリエーターに対して、何かを発信していました。難しい本を送ってもらったこともありました。当時、脚光を浴びていたフランスの思想家、(ジャック・)デリダの本です。クライアント企業の経営者で、そんな人は堤さんだけでした。

 送ってもらえれば、その経営者の趣味やストライクゾーン、興味も分かるから、とてもいいんです。

 ただ普通は、趣味のものは他人に提案するのが難しいでしょう。押し付けがましくなることもあるし、逆にその程度の趣味か、という見方もされるかもしれません。

 それでも堤さんは、そういうことを気にせず提案してくれて、僕も新しい文化を知ることができた。難しい本が届いた時には読むのが大変でしたが、本当にありがたいことです。

 堤さんのご自宅に隣接する迎賓館「米荘閣」に呼ばれて、よく食事をしていました。そこにはシェフがいて、フランス料理を出してもらったりして。クロークがあって、服を預けて、何かホテルのようでした。庭があって、クルマの取り回しもあったりして。

 堤さんはクリエーターの近くにいたいという気持ちがあったんでしょうね。ご自身も詩や小説、評論など文章を書かれるし。好きな領域だったんでしょうね。

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