山本:その時期と“今”を比べてしまうと、どうしても“今”が見劣りすることが多い。そうなると、会社や仕事、今の自分の置かれている環境などに不平・不満が出やすくなる。
50代ともなると要職や最前線から外れる人も少なくないでしょう。出世という観点では、同期の中ではかなりの差が生じ、「年下の上司」も増えてくる。そんな中で、現状、自分が置かれている立場を客観的に捉えなければいけません。
昔話をよくする人は、不平・不満もセットになっていることが多いですね。「だから、ダメなんだ」と。「過去」を振り返ってばかりの人は、こじらせやすいんですね。
山本:こじらせている人は、「今の自分」が全く見えてないことがほとんどで、「過去」に生きていたり、「未来」を悲観しすぎたりして、不平・不満は言うのに、それに対する行動を取りません。
年齢に関わらず、素晴らしい仕事をするには、「今の自分に何ができるか」を把握し、「何をしたいのか」を整理して、理想と現実のギャップを埋めることが大切です。これは、自分をうまく「再起動」させるときにも重要なので、再起動したい場合は、自分の「棚卸し」から始めるといいと思います。
肩書や地位を外して考える
棚卸しをするときのコツはありますか?
山本:「棚卸し」をするときに勘違いしやすいのは、「今の肩書や地位でできていること」と「自分の能力でできていること」を一緒にしてしまうこと。前者は部署を異動したり、肩書が変わったりすると、できなくなる。それを「自分の能力」と勘違いすると、再起動に失敗します。
また、「能力」には、仕事の処理能力だけでなく、「人柄」も含まれます。例えば、「人当たりがいい」も能力に含まれます。自分の「個性」までよく考えてみることですね。
転職活動をしたことがある人以外は、自分の「棚卸し」をしてこなかった人が意外と多いと思うんですよね。驚くべきことですが、「あなたはどんなことができますか?」と聞いたとき、「課長ができます」「部長をやっていました」としか答えられない人もいるぐらいなので。こうした人は、自分をしっかり見つめ直す機会がないまま、歳を重ねてしまったのでしょう。
就職活動のときのように、50代になっても「自分に何ができるのか」「何が得意で、何をしたいのか」を明確に答えられるようにしておけば、突然の異動で未経験の分野で働くことになっても、こじらせることなく対応できると思います。
棚卸しをするときは、
- 今の自分に何ができるのか?
※「○○長をしてました」ではなく、これまでの実績を踏まえて考える - 今の自分が得意なことは? 今後、得意にしていきたいことは?
※学んでみたいことも視野に入れる - 本当に挑戦したかったことは何か?
※「もともと何をしたかったのか」「何を大事にしていたのか」を踏まえて考える - 今の自分に求められていることは?
※今の肩書や地位を踏まえ、「周囲の期待」を考える - 住んでみたいエリアはあるか?
※特に大都市圏に暮らしている人はほかのエリアの生活まで考慮に入れる - 仕事を辞めるなら、何をして暮らしたいのか?
※いったん仕事を離れて考えてみる - 仕事の場以外で自分はどう見られているか?
※強引、傲慢、無愛想など、悪い印象を持たれていないか考える
まずはこれらを整理してみるといいと思います。
「50代の棚卸し」で特に難しいのは「自分はこれから何をしたいのか?」というものですね。若いときと比べて、「○○がしたい」というものが意外となかったりする。あえて「本当に挑戦したいこと」から考えるのも1つの方法でしょう。「仕事の目標」は当然あると思いますが、「人生の目標」となると答えられないのです。
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