特集「マクドナルド V字回復は本物か?」では、マクドナルドが本来持つ「マーケティング」「FC(フランチャイズチェーン)」「人材教育」の3つの強さを再構築したことが業績回復につながったことを見てきた。日本マクドナルドホールディングス(HD)の2017年12月期の売上高と利益は、「チキン事件」が起きる前の2013年の水準まで戻る見込みだ。
だが、復活の先の成長はどうなのか。少子高齢化、外食店間の競争激化、コンビニエンスストアなどの中食、テイクアウト、宅配サービスの増加など、日本マクドナルドを取り巻く経営環境はさらに厳しさを増している。
今後の日本マクドナルドの成長戦略について、サラ・カサノバ社長兼CEO(最高経営責任者)に聞く。

日本マクドナルドホールディングス社長兼CEO(最高経営責任者)。1965年、カナダ生まれ。カナダマックマスター大学大学院経営修士課程終了後、91年1月、マクドナルドカナダ入社。2004年~09年に日本マクドナルドに勤務しマーケティング本部長、事業推進本部長を歴任。13年8月、日本マクドナルド社長兼CEOに就任。2014年3月から現職(写真:竹井 俊晴)
先日、家族でマクドナルドの店舗で食事をしました。
サラ・カサノバ社長兼CEO(最高経営責任者、以下、カサノバ):ご来店いただきありがとうございます。サービスは大丈夫でしたか。
大丈夫でしたが、1つだけ残念だった点があります。実は妻が注文した「ビッグマック」が少し冷めていました。
カサノバ:それは大変、残念です。私たちがお客様に望んでいるような店舗体験ではありませんでした。申し訳ございませんでした。奥様にお詫びをお伝えしてください。
ありがとうございます。妻にも伝えておきます。
カサノバ:下平(篤雄副社長)にも伝えたいと思います。そうしたお客様の意見を伺うために「KODO(コド)」と呼ぶスマートフォンのアプリを導入しました。ご指摘いただいたお店の問題をすぐに解決して、お客様の店舗体験を改善することができるツールです。
業績回復はハッピーだが満足はしていない
業績について伺います。2016年から回復基調で17年1月~6月期は1店舗当たりの売上高が上半期としては01年の上場以来、最高になりました。この状況をどのように評価していますか。
カサノバ:正しい道のりをたどってきたという実感があります。
2015年、ビジネス・リカバリー・プランを導入して様々なアクションを開始しました。その中でもやはりビジネスの基礎である食の品質と安全が一番、大切だと思っています。最初にその改善を大きなコミットメントとして掲げました。
同時にやはり将来の成長のための基礎を作りたいと思いました。お客様に目に見えて分かるような変化を店舗体験としてお届けしたいと考えたわけです。
ビジネス・リカバリー・プランはどのような計画ですか。
4つの項目を掲げました。お客様の声に基づいた改善策の実施、店舗投資の加速、地域に根差したビジネスモデルへの転換、コストと資源効率の改善の4つです。
大切なのはハンバーガーやポテトなど商品がおいしいこと、お買い得感があること、お店がきれいで、店員がスマイルでお迎えすることです。私もお客様から「楽しいマクドナルドになってほしい。それが本当のマクドナルドですから」と言われたことがあります。それこそが最も大事なことだと思います。
4つのプランを進めたことによるマクドナルドの変化に対して、お客様は大変、ポジティブに反応してくださいました。今の(業績が回復基調にある)ビジネストレンドも本当にお客様のおかげだと思っています。
ですから、この業績に対して幸せな気持ちですが、完全に満足したわけではありません。やるべきことがたくさんありますし、マクドナルドは日本でまだまだ「のびしろ」があると思っています。
「ハッピーだけれども、まだ完全に満足していない」というのが今の状況です。
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