あとは、地域の方々とより交流することです。町内会の皆さんをお店に招いたり、学校の先生を招いたり、ご両親を招いたりという具合です。クルーは学生が多いですから。将来、マクドナルドで働いていただける可能性のある小学生、中学生を呼び込むようなイベントもいろいろと展開しています。

 こうした一連の取り組みは採用にかなり効果がありましたが、実施する前はFC加盟店のオーナーからは意外と多く、反対の声がありました。「本当にそんなことができるのかな」と。

日々、お店を運営しなくてはならないオーナー側にすれば「手間がかかる。大変だ」と感じることもあるのでしょうね。

下平:そうなんです。ですから、成功事例をどんどん作って発表することで、オーナーの理解を得るようにしています。

 例えば、静岡県の事例がありました。静岡県はほとんどの高校で高校生のアルバイトを原則として禁止しています。採用に関しては非常に厳しいマーケットで、私の知る限り、過去20年以上、苦しんでいる状況でした。

高校生バイトが採れない静岡でも人を採る

 その静岡県でさきほどお話したサンキューミーティングを実施したところ、平均で20人以上も採用できたという結果がありました。

それはすごいですね。一方で新しいクルーが増えると、採用後の教育が必要になりますね。マクドナルドの教育システム、マニュアルは以前から「ピープルビジネスのお手本」的な存在ですが、さらに強化をしていますか。

下平:新たなクルートレーニングのプログラムを作ったり、マニュアルを整備したりしています。作業マニュアルは従来は複数の小冊子に分かれていたのですが、今年、1冊の本に統合しました。カラーで見やすく教わるクルーにとっても、教える先輩クルーにとっても分かりやすいと評判です。マニュアル本だけではなく動画も活用しています。トレーニングのページをオンライン上に作り、接客やハンバーガーの作り方など100本以上の動画を載せています。

アルバイト店員に対する動画を使ったマニュアルの一覧画面。外国人アルバイトにも分かりやすく好評だという
アルバイト店員に対する動画を使ったマニュアルの一覧画面。外国人アルバイトにも分かりやすく好評だという
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 特に東京のお店は外国人のクルーも多い。以前は文字のマニュアルしかなかったのでかなり苦労していたという実情もありました。これが動画や写真、イラストになれば外国人クルーの方にとっても簡単に分かります。

 さらに将来は、トレーニングそのものに関してもデジタルに変えていくことを考えています。

 こうした人に対する投資は継続的にかなり力を入れていきたいと思っています。それが、この厳しい時代を勝ち抜くための大きな我々のチャレンジだと考えています。

 人材はクルーだけではなく、FC加盟店のオーナー、各店長も含めて同様に強化しなくてはなりません。次世代のオーナー、店長もどんどん育てていかないといけません。中長期の視点に立って、きちんと投資することが重要です。

クルーに対する給料に関してはどうですか。外食業界では各社、アルバイトの時給の値上げを検討しています。

下平:法令、条例などありますし、店舗の状況もありますから、基本的にはFC加盟店の場合はオーナーの裁量に任せています。

人手不足を補うため今後、調理ロボットを導入するなどオペレーションの省力化、自動化は考えていますか。

下平:そこはこれからの課題だと思いますね。ただ、何がお客様のプラスになるのかを同時に考えながら進めなくてはなりません。企業の手前勝手で効率化ばかり追うのは、お客様に対するサービスの点で本末転倒だと思いますから。

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