社長の63歳定年制は、変化を起こすため

小倉さんは、社長の63歳定年制などもつくりました。これもユニークですね。

楠木:だからこそ人格的にすがすがしいと言われるわけです。そしてある面では、この制度が会社の寄って立つところとなっている。当然ながら顧客や技術、社会の状況などが変わっていけば、それに合わせて変わっていかなきゃいけないものではありますが。

 経営は基本的に、変化を是とするものです。お客さんのために変わること、変われることは良いことであるというのがヤマトの中核的な論理として存在しています。言い換えれば経営の本質なのです。だとすると、社長といえども、しょせんは人間なので、一人の人間がそんなに大きく変わることはできません。企業が変化を続けるには、経営トップが変わらないといけない。

 だから小倉さんは、社長の定年について一定の年齢を決めたのでしょう。それが65歳か63歳かというのは、どちらでもいいのかもしれません。どちらにしても社長の63歳定年制は、小倉さんの考える論理が具体のレベルに下りてきた仕組みなのでしょうね。

楠木教授が小倉さんと同じくらい評価する経営者は、ほかにどんな人がいますか。

楠木:論理に優れていたのは小倉さんに限ったことではありません。松下幸之助さんや井深大さんも非常に論理体系ができていました。優れた経営者に共通する特徴なのでしょうね。ただその中でもとりわけ論理的であるという部分で、小倉さんは日本の経営史において傑出していたと思います。

 優れた経営者はそれぞれ論理をバックボーンにしています。ただその論理の中身は当然ながら経営者によって異なります。小倉さんの場合、63歳定年制が必然になるような、やはり「変化を起こす」ということを、論理の中核に持っていたのではないでしょうか。