自分の賞味期限をどう見極めるか

高岡社長が最初に『小倉昌男 経営学』を読んだ当時の感想と、長く経営トップを務めた今だからこそ感じる点に違いはありますか。

高岡:最近感じるのは、自分自身の賞味期限についてです。小倉さんはご自分で、63歳を社長の定年としました。これは多分、自分の賞味期限を考えていらしたのではないでしょうか。

長く経営トップを務めると、自分の賞味期限について考え始めるものなのでしょうか。

高岡:当然考えますし、経営者たるもの、常に考えていなくてはならないとも思います。日本のサラリーマン社長の場合、就任した当初から4年や6年に任期が設定されています。ですから自分の賞味期限などは考えないのかもしれません。その点、オーナー経営者の場合は、最低でも10年以上トップを務めますし、それが普通です。すると、どうやって自分の引き際を見極めるのかというのは、常に付いて回る問題でしょう。

 私の場合、ネスレコンフェクショナリーとネスレ日本という2つの会社で経営トップを務めて13年になります。あと2年強もすれば、ネスレ日本の社長だけでも10年務めたことになります。優秀な業績を残した世界の経営者を見ると、平均で10年間ぐらいは社長をやっていますから、それ自体は決して長くはありません。

高岡社長は、自分の引き際をどのように考えているのでしょう。

高岡:私は1度でも売り上げや利益の目標を達成できなかったら辞めようと考えています。やはり人間ですから、自分の賞味期限を見極めるのはとても難しい。何をもって判断すればいいのか分かりませんよね。だからこそ、設定した目標が達成できないことを一つの目安にすべきだと思うんです。それしかないのではないかな、とも。

 小倉さんはもう亡くなられたので、なぜ63歳で社長を退いて、会社を次の世代に託そうと思われたのか、聞きたくても聞くことができません。ただきっと、このまま自分が社長を続けても新しいものが生まれてこないと考えたのではないでしょうか。であれば、次の人に会社を託そうと思われた。仮に自分の存在が次の世代にとってマイナスになるようなら、会社に顔を出すこともやめようとされた。そんなふうに考えたのだと思います。

 私も掲げた目標が達成できなくなったり、仮に業績が悪化してもそこから好転する方法が分からなくなったりした時が、一つの潮時であり、自分の賞味期限だと思います。あともう一つ、自分の中でやりたいことがなくなった時というのもあるでしょうね。こんな新しいことに挑戦しよう、こんな新しい顧客の問題を解決しよう、と思えなくなると、それは経営者としてのモチベーションが下がっていることでもありますから。

 ただ幸い私は、これまでそんなふうに思うことが一度もありませんでした。背景には私の原動力になった、ある思いがあります。後編ではその辺りから、話を進めましょう。

(後編に続く)