特に真似したいと思う部分はどういったところでしょうか。

村上:すごく参考にしているのが思いの統一感ですね。売上高が1兆4000億円を超えて、日本中に宅急便のネットワーク網が張り巡らされている。これだけ大きな企業なのに、その姿勢がぶれることはありません。根底にある思想が整っているからだと思います。

 確かに「自分の頭で考えろ」ではないところもあるかもしれません(詳細は前編「経営の本質は経営者が自分で考え抜くこと」)。とはいえ、大事にしたい思想がずっと引き継がれて会社が維持されている。

 小倉さんが引退した後も経営者は次々にバトンタッチしていて、現在のヤマトホールディングス会長の木川眞さんのように、銀行からヤマト運輸に転じて社長になった人もいる。それでも思考がブレないのは驚くべきことです。それだけ尖ったメッセージを発信しているのでしょうね。

 実際、東日本大震災後の142億円の寄付は木川さんが決断を下したと『ヤマト正伝』に書かれていました。こんな強烈な決断を下せるのはヤマトらしい考え方が染みついているからだと思うんです。きっと木川さんはヤマトグループに転職する時、「この会社に根付く思想を壊してはいけないな」と感じたのではないでしょうか。単に「お金を儲けるぞ」という考えの人に、ヤマトグループのような会社の経営者は務まらないと思います。

 経営者は株主の利益を守らなくてはなりません。けれど時には、それを越えたことも大切にしなくてはならない。企業としての使命感を持っていなければならないのです。

経営者は、思いを言葉で伝えていく

リブセンスは今、急激に成長していて社員数も増えています。組織が大きくなると社員の目線を合わせて思いを統一することが難しくなるはずです。

村上:私もその難しさを最近感じています。当社では下期に「リブセンス・ネクスト・プロジェクト」という中期経営計画の戦略のようなものを練っています。その過程で、組織の分母をどうするのか、もっと言語化して言葉にして伝えていかなくてはならないと感じています。

 組織が大きくなると、どうしても経営トップが社員の人柄や考え方を理解するために接触する時間は限られてしまいます。だからこそ、会社の方針や経営者の思いを言語化するのが基本になる。きちんと言語化した上で、行動も伴わせることで価値観が一緒になる。

 私は言葉で伝えることがあまり得意ではないので、まだまだだなと思っています。これからはもっと思いを発信して、当社が何を大切にしているのか、どういう人を登用するのか、どんな思想で事業を運営しているのか、言葉で表現して伝え続けていきたいと思っています。

確かに小倉さんは印象的なフレーズをいくつも残していますよね。「サービスが先、利益は後」「全員経営」など、非常に分かりやすい。

村上:当社でも、そうした言葉をちゃんと作りきらなくてはいけないな、と。当社の経営理念は「幸せから生まれる幸せ」、コーポレートビジョンは「あたりまえを、発明しよう。」ですが、これをもっとブレークダウンした思想がまだ弱いと感じています。

 もちろん現在でも、普段から社員と食事に行ったり、スタッフの全員が気になることを直接質問できる社長質問会を設けたり、月に1回は私が思いを伝える場を作ったり、社内向けにメールマガジンを書いたりと、思いを伝える工夫はしています。ただそれでも、私が求めるほどしっかりと伝わりきっているかというと、まだ足りない。難しいけれど、伝え続けていかなくてはならないと思っています。