目の前の仕事の「先」に何があるのか

「大義」というのはどういうことでしょう。

村上:何のためにこの事業をやるんだということも、小倉さんは考え抜いて、自分の頭で整理し、それを社員に伝えています。

 日本に必要な良い会社に投資して社会や企業の成長を助けるという理想を掲げる、独立系直販投信会社の鎌倉投信は、ヤマトホールディングスに投資をしています。実は当社にも投資をしてもらっているのですが、同社の年1回の総会で、ヤマトホールディングスが取り上げられたことがあったんです。

 この時、ヤマトホールディングスが、セースルドライバーなどに見せる教育用の映像を公開してくれたのです。ご覧になったことはありますか。

はい。映像の中では、例えばセースルドライバーが地方の老夫婦にビデオデッキを届けたりしますよね。老夫婦は自分でセットできないので、セースルドライバーが業務の範疇を超えて設置する。すると、離れた場所に住んでいる子供と孫の映像が映し出される。「届けているのは単なる荷物ではない」ということ、そして「荷物を渡した先にあるもの」は何かを伝えるエピソードが、次々に流れていきます。

村上:あれを見て、私は泣いたんです。とても感動的なので。

 すごいなと思うのは、これを見ると「荷物を届けた先」に何があるのかを、現場のスタッフがすぐに理解することができる。単に荷物を運ぶのではなくて、それがどんな「意味」や「価値」を持つのか。「荷物を運ぶ」という仕事にどのような思いを込めるべきのか。そういったことがすとんと理解できるのです。

 目の前の仕事の「先」に何があるのかを考えてほしいということは、私も社員に伝えています。目の前の仕事はプログラムを書いたり、職探しを助けたりすることかもしれない。けれどあなたは、それを通して世の中をどうのように変えたいのか。

 単にレンガを積んでいるのではなくて、自分たちは城を作っているのだという視点を持つこと。「荷物の先にあるものを考える」ということを、私はそんな風に解釈しています。

 普段からそういう視点を伝えていましたが、改めて当社は事業のレイヤーを広げようとしています。単に求人サービスを展開しています、不動産情報サービスを提供しています、ではなくて、そのさらに先に視点を広げられるよう、事業領域の伝え方も変えていこうと考えています。

 当社ではちょうど今、ホームページをリニューアルして伝え方を変え始めているところです。「リブセンス・ネクスト・プロジェクト」という中期的な経営計画の中でも今後のビジョンを再定義して、事業領域を広げていこうと伝えています。私たちは求人サイトの運営をしているのではなくて、世の中における適材適所を促して社会全体の生産性を高めているんだ、と。みんなが「仕事」に対して一つ上の視点を持つことができれば、組織は強くなるはずです。

 人間、苦しい時はどうしたって目の前のことが気になって、その先に何があるのか見えなくなります。だからこそ経営者は、常にその仕事の先に何があるのかをきちんと伝えていかなくてはならない。

 私も株式上場してからは、業績を下方修正したり、苦しい局面がありました。ただ実際には、私自身はそれほど辛くはなかったんです。それはなぜかというと作りたい未来が見えているからです。このサービスであんな未来を作ってたくさんの人に喜んでもらおう。目の前の仕事の「先」にあるものを描くことは、経営者にとっても、企業にとっても大きな強みとなるはずです。

(後編に続く)