我が国の年間医療費の総額は40兆円を突破し(2014年度)、このうち10兆円以上が生活習慣病関連と言われています。それにも関わらず、定期健診を受けていない成人の“健康弱者”がたくさんいる。国民健康保険は高額で、皆保険という建前とは裏腹に失業などから保険料を払えない人も多い。このため無保険の子供たちもいます。

川添:小倉さんが開発した宅急便の強みは、何よりも不特定多数を対象にして、サービス対象エリアを日本全域に広げたことにあると思っています。宅急便は、都市部に住む人や富裕層といった、一部の人を対象にしたサービスではなかったわけです。時間をかけて、全国にサービスを広げていきました。

 これは当時の運送業界では合理的でないと思われたはずです。いつ、どこから、どこへ送る荷物を受け取るか事前に分からないわけですから。けれど、おそらく小倉さんの頭の中には、緻密な計算と市場の把握があったのではないかと思います。

 私たちが提供する自己採血によるセルフ健康チェックも、決して特定の富裕層を対象にしているわけではありません。メーンに据えるのは、健康診断を受けていない約3600万人の成人です。

ケアプロを立ち上げた当初から、様々な場所で健康チェックをする出張イベントが、事業の中核になると考えていたのでしょうか。

川添:初めはイベントではなく、駅や商業施設の中に固定店舗を構えた方がいいのではないかと考えていました。ただ、続けていくうちに、固定店舗よりもイベントの方が、収益性が高いと分かってきたんです。

 家賃がかからなければ固定費を抑えられますし、様々な場所でイベントを開催して商圏が広がれば多くのお客様にアプローチすることができます。さらにお客様が健康チェックした後で、例えばスポーツジムに通うとか、自炊で食生活を改善するためにスーパーに通うとか、体にとって良い行動をしようとすると、こうした外部の事業者と組んだ方が、お客様にとっても利便性が高くなると分かったのです。

ケアプロのビジネスモデルは宅急便と似ている

川添:実は、ケアプロのビジネスモデルは宅急便と共通点が多いと思っています。

 宅急便は、荷主の家にセースルドライバーが集荷に訪れます。それも宅急便を活用した通販が浸透してからは、それまで消費者がスーパーや百貨店まで足を運んで買っていた商品を、自宅に届けることができるようになった。これこそが、イノベーションだと思うのです。日本人のライフスタイルを大きく変えたわけですから。

 ケアプロが提供するセルフ健康チェックも同じようなインパクトがあると信じています。私たちのサービスが広がれば、これまでは病院に行かなければ受けることのできなかた健康チェックを、最寄りの駅前やパチンコ店、フィットネスクラブ、ドラッグストアなど、より身近な場所で受けられるようになる。今後は中小企業の工場など、より幅広い場所で健康チェックを実施できるようにしようと考えています。描く世界が実現すれば、それは大きなイノベーションになるはずです。

 また宅急便と同じように、このセルフ健康チェックもコスト構造の大半を占めるのは「人」です。それぞれの場所で、スタッフがお客様とコミュニケーションを重ねながら健康チェックをするわけですが、この現場のスタッフこそが最大の武器なのです。会話を通してお客様の信頼を得て、リピーターを増やしていかねばなりません。

 現場のスタッフの力によってリピーターが増えれば、人材の稼働率が上がって、利益を出せる高い生産性を確保できるようになる。セールスドライバーも、単に荷物を届けるだけでなくて、お客様とコミュニケーションを重ねて売り上げを伸ばしていきます。まさに最前線の「人」が一番の宝であり、資産なのです。

(後編に続く)