バリの兄貴こと丸尾孝俊氏と“ずるゆるマスター”大城太氏の対談もいよいよ最終回。バリ島に在住する兄貴とビデオ通話により実現した今回の対談。
前回、
前々回で、現在の日本の企業の在り方に、くさびを打ち込んだ兄貴。今回は、若者や落ち込んでいる人間との付き合い方、そして我々が今後目指すべきことなどについて教示してもらう。
バリの兄貴
本名:丸尾孝俊。1966年、大阪生まれ。中学校卒業後、看板屋に丁稚奉公。その後、飲食業、トラック運転手などからの独立を経てバリ島へ渡り現在は関連数十社へと成長しバリに住まいアジア中心に数百ヘクタールの不動産と数十件の自宅を所有。現地の孤児院や病院などに寄付を欠かさぬ人柄は、本人がモデルとなった映画「神様はバリにいる」(原案書籍:出稼げば大富豪)で存分に描かれている。
若い人間との付き合いを深めよというお話しがありました。ただ、こちらもいきなり誘うのって恥ずかしかったりします。若い人間と接点を持つとき、何から始めたらいいんでしょうか。
兄貴:あのね。よく面倒を見ながら、仕事以外の話を盛り込むことです。仕事一辺倒ではなく。
例えばね部長、課長、係長、主任から、新入社員がどれぐらいランチ一緒にどうですかと声をかけてもらっているかです。僕のところなら、全員、僕とランチ食べに行ってくれます。
これはね、日本というのは面倒の国。もっと言ったら武士道剣道の国。メンで1本、ドウで2本(ニッポン)。勝利です。近寄ってけーへんヤツのことをコテサキという。
ということは、もう1回、ふところにはいらんといかん。ということは遠慮はいらん。配慮が必要なんです。
結局、心理戦を戦う者が勝つ。要するに心情なんや。心の底からやってるか、そうでないか。
面倒見たると思うたら、相談に乗ってかかれるということ。いかにどんな形でも相談に乗れるか。そういうことを上司、先輩として探究する必要があるが、その時間を割いていないのが現状。
お前、家近いやんか、一緒に通勤しようやっていう上司が何人いるやろ。一緒に帰ろう、昔はそんな上司や同僚も当たり前にいてくれて、立ち飲み屋連れて行ってくれた。
そういうことをやらない、仕事以外のことは話さなくなった、口を開かなくなった上司。そこに信頼ができなくなった部下は無口。
今は本当にね、昔あったことをもう一度研究して、取り戻す必要があると考えます。
大城:メンとドウで面倒ですね、コテは小手先。名言ですね。
今、中間管理職だと、上からノルマがあったりして辛い立場で、電車とかでも浮かない顔をした人が多いんです。そういう人たちが明日から元気になれるように、何か実践できることはないでしょうか。
兄貴:社内共通、社員共有の趣味を持つことです。うらやむという言葉があるよね。そして、うらやむという言葉が成長したのがねたみです。
何かあの課長、バリ島に遊びに行ったらしいぞ。そんなことをねたみはじめる。そんなことだったら、逆に机の脇にでも1枚写真を貼っとくぐらいの、精神力を持った方がいい。皆が私生活を自慢できるくらいの会社。
ようするに、包み隠さずだったりするのは、日頃の交友関係にあるんや。心許せるか、そうじゃないかっていう、こういうところにあると思うんです。
どっちかというたら、社内でも、ちょっと今出すぎたなと思っても、そこフォローしてくれる上司、ここに人気が集中していました。
だけどそう言う事すると、今はどっちかというと風紀が乱れるっていうやろ。それでいて無茶無茶寂しい、冷たい感じがあったり。和気あいあいとしてない。あー、このままじゃ会社潰れちゃうんだろうなと、思てまうよね。
部署ごとライバルみたいなワケのわからない風潮をもってして、社内で対立する事で会社が大きくなるだろうとか思っているところもあるよね。ホント言うたら、もっと大きな敵があるはずやで。世界という。そこで勝とうと思ったら、日本はもっと一丸とならなアカンはずなんや。仲たがいばっかりしたり、人の悪口や陰口を叩いて回ったり、そんなのが社内におったら、一丸となるのは難しい。
大城:そういうやつがおったら、どう対応したらいいんですか。
教えてあげる人に踊り出る
兄貴:まー、たいていおるんやけどな。おった場合は、取り込むんや。そいつをより近くに置くことです。部長の悪口ボーボー言ってるやつおったら、席を部長の真ん前に移動させるとか。それが一番即効性があるし、緊迫感がある。
大城太1975年2月8日生まれ。大学卒業後、外資系金融機関、医療機器メーカーで営業スキルを磨き、起業を志す。起業にあたり、華僑社会では知らない者はいないと言われる大物華僑に師事。厳しい修行を積みながら、日本人唯一の弟子として「門外不出」の成功術を伝授される。独立後、医療機器販売会社を設立。アルバイトと 2人で初年度年商 1億円を達成。現在は医療機器メーカーをはじめアジアでビジネスを展開する6社の代表および医療法人理事を務める傍ら、ビジネス投資、不動産投資なども手掛ける。2016年 3月より日経ビジネスオンラインにて『
華僑直伝ずるゆる処世術』を連載。
大城:日本では優秀なやつは優秀なもの同士、ちょっと本流から外れたら外れたもの同士で固まる傾向があるのですが、兄貴はどんな人でも受け入れるじゃないですか。そこがすごいなと尊敬しています。例えば調子悪い人、破産しちゃいそうな人とか、こいつは絶対出世しないだろうなみたいな人とか、そういう人と付き合いたくない、という日本人って多いのですよ。そんな人でも兄貴は迎え入れていますが、これってどうしてでしょう。
兄貴:簡単に言ってしまったら、恩返しをしているだけなんです。日本という国が僕を育ててくれたから。僕みたいなできの悪い人間に、ものすごく暇をかけて面倒を見てくれる上司や先輩方たくさんいました。結果、僕は出来なかったこともたくさん出来るようになったんや。
ということは、見捨てたら最後なんや、人は。だから誰であっても決して見捨てない。最後まで付き合ってやろうじゃないかと。それが僕を育ててくれた先輩方の、大和魂だと思ったからです。
大城:例えば、負のエネルギーを持っている人とはつきあいたくないと思ってしまうんです。ここはどう突破していけばいいのでしょう。
兄貴:おるからな。負のエネルギーを醸し出す奴。あのね、それを突破する方法、簡単なんです。実は。
教えてあげる人に躍り出てください。「お前、めっちゃ醸し出してるわ、負のオーラ」、みたいな。多少嫌われるかも知れへんけど、放っておかずに、「お前めちゃめちゃ負のオーラ醸し出しちゃってるじゃん」というのを、教えてあげてください。そしたらその人、きっとあなたに懐きよるから。
そしてもし、そう言うてくれる人がそれまで 1人もおらんかったとしたら、そこで言うたる事で、その人は一発で変わり始めるんや。じゃあどうしたらええんや、っていうことだけを考えるようになる。
大城:ただ、やっぱり兄貴だからできるんです、パワーがあるから。こっちは負のエネルギーにやられてしまってうつってしまって、こっちが病んでしまう。だから沈んでいる部下がいても、うつるから近づかないでおこうみたいに考える人もいるんですね。
兄貴:もちろん、いったん出来るようになるまではね、避けて通って良いと思うよ。
ただね、人は、いつまでもいつまでも成長しないわけにはいかん。このままじゃアカンやつやって思ったら、出来る範囲でチャレンジや。じゃないと、負のままおいとったら、負のままで成長してしまう。病気という名前に成長して、そしてそれから、ある日突然姿を現さない人になってしまう。それでは、日本が勢力を失うだけや。
間違いないです。放置してはいけないんや。
100人に嫌われたって1万人に慕われりゃええやん
ただ言ったら嫌われるんじゃないかという恐れがみんなあるのだと思います。恐れみたいなものを乗り越える秘訣はあるでしょうか。
バリにいる兄貴と日本にいる大城氏とでビデオ通話により対談を実現した
兄貴:完璧な秘訣があります。
どういうことかというと、嫌われるのイヤや、って言っている人に共通すること1つあんねん。それは、徹底的に友達の数が少ないという事や。
僕の場合は、10人に嫌われたら1000人の友達を構成します。100人に嫌われたら1万人や。そうなると、嫌っている方も、嫌う事が馬鹿らしくなってきます。1人に嫌われとったって、あいつ1万人に慕われてるやんって。結果、その人は、間違っているのは自分だったんじゃないかという事に目が覚める。
ということは、友達の数を飛躍的に増やしてください。そう思います。
大城:それはそうですね。私も目が覚めました。
兄貴:例えば、毎日毎日セミナーばっこばっこ行って、皆、友達になって帰ろうよ、ってやったとしたら、一発で10人友達が出来る、100人出来る。そしたら、例え3人に嫌われたとしても、プーや。10人しか友達いないから、1人に嫌われるだけで大ダメージなわけで。
ということは、ずっと進行形に過ごすことです。
進行形というのは、嫌われてもやり続けるということでしょうか
兄貴:これは視点によるんです。どっから見た視点の人に嫌われたかによるんです。自分が正義なら構わん。なんぼ嫌われても構わんと、こういう姿勢でいいと思います。正義ならね。間違っているなら、謝らないかんけど。ごめんなさいってね。
正義があって、正義を嫌っているやつが間違っているんですからね。そんなのにはびくともしません。へっちゃらプーです。
やはり友達がいるというのが幸せなんですよね。
兄貴:もちろん、友達に囲まれることが幸せです。例えば、仲ようしてくれるのも人。祝福してくれるのも人。何でもかんでも人なんや。ほとんど大抵の場合は、人があってこそなんです。
ということは、金持ちが幸せなのと違う。人に囲まれている事こそ、幸せなんです。金は金を貸してくれないが、人は金を貸してくれるよ。
大城:華僑たちの言葉に似たようなものがあります。お金儲けは目印。人生の目的は仲の良い友達を作ること。
兄貴:例えば、僕は友達が1万人の人です。直接つながっています。ほんなら、直接つながっている人に、10万円ちょうだいや、っていったらどうなる? えげつない額になるね。
でも、10万円でいいの、って言ってくれる人もたくさんおる。これが実力です。1億円、持っているのが実力と違う。
ビジネスを成功させるにも、まずは人に囲まれるというところからでしょうか。
兄貴:もちろん。だから人通りが多いところに、マクドナルドも出店するし、KFCも目白押しや。高い家賃を払って、そこに店舗置くわけや。それはどういう事かというと、カンバンを売ってきたからや。
例えば、ポテトもいかがですか? っていう売り子さんが、きゃりーぱみゅぱみゅだったら、どうや。どんな田舎でも大渋滞やろ?
それがご理解頂けたら、お分かりでしょう。どんな企業も、従業員一人ひとりがお客さんを放置しないで、友達の関係に持ち込むんや。家族付き合いをしていたらどうや? 会社が金に困っていたら、その家族は金貸してくれるよ。
そうなったら、モノなんて買うてくれなくてもええやん。これが健全企業です。
兄貴の目標=周りの人の目標
改めて、兄貴に幸せとは何ですか、と尋ねると、人に囲まれるというのが
1つですね。
兄貴:人と共にあること。自分のことを支えてくれる人が、遠く離れていてもいいから、あること。これが田舎の爺さんや婆さんだったり、故郷に留まってくれている人が日本には沢山いる。でもその爺さんや婆さんにすら会いにいかんかったとしやら、おしまいや。
会いに行った方がいいよ。
兄貴はこれから何を目指すんですか
兄貴:周囲の人、うちのスタッフ、仲間、友達、うちの関連会社の社長、社員、お手伝いさん、みんなが目指していることを一緒に目指します。自分に目指すところはもうない。
みなさんが目指す方向はばらばらだと思いますが、
兄貴:全部に付きおうてかかる。うちのお手伝いさんの目指すことが日本旅行だったら、それを応援する。1つ、また1つと叶えていく。
そんな事が目標です。
一方で、私たちサラリーマンは、何を目指していったらいいのでしょう。
兄貴:独身の人は、結婚や出産やと思うよ。
お父さんだったら、人と交わる機会をどんどん設けていく事やな。そういうのが必要だと思うわ。
それと、自分の両親、友達、後輩への面倒の見方をもう一度、見直した方が良いかもや。どんな人にも優しく接する。重要なんはそこや。
本日はどうもありがとうございました。
兄貴:おおきに。皆んなで遊びに来てや。
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