人生の成功者として崇められる大富豪。家はプール付きでクルマは高級車を複数台所有。お抱えのコックの料理を前にブランデーを傾ける。週末はプライベートジェットで都会の喧騒を離れてゴルフやマリンスポーツ。
そんなイメージをもたれる大富豪に少しでも近づくべく、大富豪の教えをまとめた書籍が、書店で多く見られるようになってきた。大富豪の考え方や習慣などを参考にすれば、今より素晴らしい世界が開けるかもしれない。
本コラムは華僑の大富豪に弟子入りし、自らも起業して成功を収めた“ずるゆるマスター”こと大城太氏が、やはり大富豪に学ばれた方をお招きして、人生の成功術について探っていく。1回目のお相手は、企業経営者であり成幸研究家でもあるトニー野中氏。野中氏は仕事を通じて2000人以上の大富豪とお付き合いがあったという。
トニー野中氏(左)と大城太氏(写真=深澤明、以下同)
今回は、いずれも大富豪に学ばれて自らも成功を収めたお二人の方、トニー野中さんと大城太さんと一緒に議論していきたいと思います。お二人とも元々はサラリーマンだったという共通点があります。最初に自己紹介をお願いします。
野中:トニー野中です。今年で55歳になります。元々はエンジニアでした。最初はIHIでジェットエンジンの設計開発に携わり、そこからゴルフクラブの開発エンジニアになり、IT企業を経て、独立しました。
本を書き始めたのは、50歳になってからなのですが、20代の頃から多くの大富豪の方に会うことができ、彼らを研究した成果をまとめています。
大城:大城太です。私は、元々教員志望だったのですが夢かなわず、民間企業に勤めました。教師になれないのだったら、お金儲けをしたいと考えました。お金儲けといえば、ユダヤか華僑と言われているなかで、私の両親は沖縄出身だったので、アメリカに親戚がたくさんいました。ただ、彼らと接する中で、ユダヤの話も出てきたのですが、私にはちょっと合わないなと感じていました。
やはりアジア人であれば華僑に学ぼう。ということで、華僑が多くいる大阪、神戸で著名な大物華僑を見つけ、無理にお願いして弟子入りしました。
人生の成功者ということで、今回の対談の場を設けたのですが、読者の皆様に嫌味にならない程度に、成功っぷりを教えてもらえますか?
トニー野中企業経営者、成幸研究家
1962年生まれ。石川島播磨重工(現IHI)にて、ジェットエンジンの設計開発に携わった後、5カ国共同開発エンジンの国家プロジェクト・メンバーとして英ロールス・ロイスに駐在。その後、米国のゴルフ用品メーカーにて、タイガーウッズはじめ多くの世界トッププロのクラブ開発で実績を上げ、ロスチャイルドをはじめとする、多数の大富豪やセレブリティーと懇意になる。現在、IT企業や投資会社など5社を経営する傍ら、たんなる「成功」が目的ではなく、「お金・時間・健康・人脈」の全てを満たされることを人生の目的とする成幸研究家として世界の大富豪たちの習慣や考え方を体系化している。
著書の「
世界の大富豪2000人に学ぶ」シリーズは10冊、累計100万部を突破(電子書籍を含む)
野中:私は自分で成功しているとは基本的には思っておらず、まだまだやれると思っているのですが、経営者としては5社を経営しています。IT企業や金融投資の企業などです。
クルマは富裕層の代名詞ともいえるフェラーリを新車購入し、既に13年所有し続けています。フェラーリは、経済的に考えると買う事より維持し続ける方が難しいのですね。またアルファロメオなども持っており、普段の足として使っています。
大城:毎日が楽しい生活を過ごせている、時間が自由になっている、というのが、成功しているからなのかなと感じます。金銭的にも、心配がなく、そして健康である。満足はしていませんが、納得がいくものは手に入れたかなと思っています。
今日は何曜日かというのもあまり意識していないです。というのも、仕事をしていてもいいし、遊んでいてもいい。何をしていても楽しいと感じています。
会社は6社を経営していて、中国の工場を入れれば、トータルで60億円ぐらいの売り上げ規模になります。
たまには豪勢な食事をとろう
このように成功しているお二人をすぐにでもまねてみたい、という人もいるかと思うのです。私たちでも簡単にまねできるような習慣が何かないでしょうか? 普段心がけていることがあれば教えてください。
野中:私がお付き合いさせていただいた大富豪の方は、一部日本人の方もいらっしゃいますが、多くが欧米の方です。彼らは、普段は質素に暮らしているんです。普段の食事も豪勢なのではないかと思われるかもしれませんが、私も普段は質素に暮らしています。
かといって、あまり安いものばかりを食べているとセルフイメージが下がってしまうので、たまには数万円といった食事もします。普段はお茶漬けも食べますから、極端です。
セルフイメージが下がるというのは、具体的にはどういうことですか?
野中:例えば、100円ショップは大繁盛していて、私も重宝しますが、その一方で、格安なお店にばかり行っていると、どうしてもお金に対する目線が低くなってしまいます。高いものを見たら、手がでないとかになってしまう。そうなるとビジネスでも安いものを考えてしまう。そこが問題かと思います。
サラリーマンの方でも、たまには予約しなくてはいけないような店に行って食事をしてみる。そうすれば、それまでとは違った発見ができます。いいものが分かるようになると思います。
大城さんが、習慣として心がけていることは何でしょうか?
大城太 1975年 2月 8日生まれ。大学卒業後、外資系金融機関、医療機器メーカーで営業スキルを磨き、起業を志す。起業にあたり、華僑社会では知らない者はいないと言われる大物華僑に師事。厳しい修行を積みながら、日本人唯一の弟子として「門外不出」の成功術を伝授される。独立後、医療機器販売会社を設立。アルバイトと 2人で初年度年商 1億円を達成。現在は医療機器メーカーをはじめアジアでビジネスを展開する6社の代表および医療法人理事を務める傍ら、ビジネス投資、不動産投資なども手掛ける。2016年 3月より日経ビジネスオンラインにて『
華僑直伝ずるゆる処世術』を連載。
大城:サラリーマンのときと大きく変えているのは、食事です。サラリーマンのときは、やはり会社の人間と行くことが多かったのですが、今は家族、もしくは友人家族とともに取ることを心がけています。外に食べに行く場合でも、友人家族と一緒に行っています。
朝も、家族と一緒に食べることをとにかく心がけています。私は朝が早いのですが、子どもたちを無理矢理起こしてでも、家族と一緒に食べるようにしています。ここが多くの方と、ちょっと違うかなと思います。
食事は家族や友達と一緒にして、仕事の話は抜き。加えて早起き。
大城:野中さんの書籍にも書かれていますが、早起きでない大富豪はいないと思いま
す。サラリーマンのとき、私は全然成功していなかったのですけど、早起きはしていました。
先ほどお話ししたように華僑に弟子入りしたのですが、華僑の方はとにかくみんな早起き。その文化をすんなりと受け入れることができたのはよかったかと思っています。
もちろん、早起きですから、必然的に夜は早く寝ます。私、京都に住んでいるのですが、京都といえば祇園という繁華街がありますが、祇園に行ってもとにかく、11時には帰るようにしています。
大富豪はみんな早起きだ
欧米の大富豪も早起きですか?
野中:そうですね、みんな早起きです。そして、大城さんが言うように、みなさん家族を大事にしていらっしゃる。生活の中心には家族がいらっしゃる。大富豪の方を見ていると、特に強くそう思います。
私たちも家族を大事にしているとは思うのですが、それ以上なのでしょうか?
野中:家族をうまくまとめられないんだったら、ましてやビジネスや自分の会社をうまくまとめられないだろうから、なんでしょうかね。
それはおいておいても、何のためにビジネスをしているの、と聞くと、家族のためだという大富豪の方が多くいらっしゃいます。家族が活力であり、すべての基礎になっているように思います。
野中さんも、早起きですか? 早起きだと具体的には何がいいのでしょうか?
野中:いつも4時台に起きています。富豪の方々と会うようになり、ここ20年ぐらいは、ずっとそんな感じです。
野中:早起きがいい理由はいろいろあるのですが、まず朝日の光がいいのです。朝日の光を目から取り入れると、脳からセロトニンという物質が分泌されます。これは「幸せホルモン」と言われているのですが、セロトニンの効果の1つは、メラトニンという眠けの物質を抑えてくれることです。
また、人間の感情には起伏があるじゃないですか、高揚したり落ち込んだり。落ち込むことを誘発する物質はノルアドレナリン、一方でランナーズハイのような高揚する状況を誘発するのはドーパミンですが、セロトニンには、これらの物質をコントロールする効用があります。
そして上がったばかりの朝日の光は、脳内からセロトニンを多く分泌させる作用を持っており、朝日の光を浴びて、セロトニンを毎日分泌させれば、いろんなアイデアも出てくるのです。
仕事は嫌なものから片付けよう
朝ぐずぐずしているんだったら、早起きして朝日の光を浴びればよい。これだったら、すぐにでも実践できそうです。他にも何か、習慣があれば教えてください。
野中:仕事は嫌な仕事からやります。これも大富豪の方から聞いて実践しています。人によっては、やりたい仕事からやってエネルギーを高くしてから、嫌な仕事を乗り切れという人もいるのですが。
ただ、楽な仕事や好きな仕事から始めても、嫌な仕事が残っていると、それがどこか頭に残っている。そうすると、どうしても、気持ちよく仕事ができない。だったら、嫌な仕事を片付けてしまって、気持ちよくやりたい仕事を後からやる。私は、1日にしなければならない仕事全体を見て、いつもこのように習慣づけて仕事をしています。
でもやはり嫌な仕事は後回しになりがちです。
野中:結局、嫌な仕事をやらないというのは逃げじゃないですか。それって後向きですよね。攻めるという前向きな気持ちになりにくい。
ビジネスで成功する大富豪は、そのあたりがしっかりしていますよね。嫌な仕事でも、逃げないんだ、攻めるんだ、という気持ちです。自分に言い訳して、後回しにするなんて人は、まず大富豪にはいないです。
そもそも、その日その日の仕事でいえば、好き嫌いがあるかもしれませんが、大富豪の方は、基本的にはほとんどの人が好きな仕事をしています。多くのサラリーマンは、何のために仕事をしているかと聞くと、生活のためと言うかもしれません。そのために、嫌な仕事をしているんだと。一方で、成功している大富豪の方は、基本的には好きなことしか仕事にされていませんよね。
マイナスのことから逃げる自分を楽しむ
仕事のことに関しては、また後ほどお聞きしたいと思います。大城さんが、心がけている習慣は何でしょう?
大城:これは完全に華僑流ですが、「1人でやるな」というのがあります。悪いたとえかもしれませんが、日本では万引きでも、単独犯が多いのですが、中国では1人ではなくチームでやります。
これは、1人でやると、成果もたかが知れているからなんです。例えば、私が嫌なことでも、他の人は好きな場合がある。だったら、自分が嫌なことはその人にやってもらって、自分は好きなことをやった方が効率が高くなる。適材適所といいましょうか。その方が、人からは「ありがとう」と感謝されるし、やりがいにもつながっていく。このようなメリットがあるので、「1人でやるな」は強く意識しています。
日々の生活で気をつけていることはありますか?
大城:マイナスなことからは逃げます。
脳というのは反応するんです。ある統計を見たのですが、多くの人間は放っておくとマイナスのことを考えてしまう。プラスのことを考えないと、防衛本能上、動物はすぐに守るので、マイナスのことを想定してしまう。
だから例えば、グチとか悪口とか、そういうことからは逃げることを実践しています。喫茶店や居酒屋に入って、横で怒る人がいれば、席を変えるようにお願いしますし、もしダメならその店からは出ていきます。これを実践しています。
事故や事件のテレビ番組も見ません。新聞でもそういった記事を見ません。イメージがわいてしますので。
見てしまうと、どうなるのでしょう?
大城:例えば、事故を起こした人は、事故を見たことがある人の可能性が高いんです。覚えてしまうんです。危険であればあるほど、自分の防衛本能上、覚えてしまうんです。
私は、マイナスのことからは逃げて逃げて逃げる生活。それを逆に楽しんでいます。
(明日公開の第2回に続きます)
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