会社を独立した自由人が集まる場に

では、何によって給料の額が決まるんでしょうか?

:個々の事情によってです。例えば、仕事上でまったく同じ成果を上げた2人がいて、独身の1人暮らしで当面はそんなに生活に困っていないというAさんと、子どもが4人いて教育費に出費がかさむBさんだとすると、Bさんに多く取ってもらいます。それをアンフェアだと言う人もいるけれど、僕はむしろフェアだと思う。Aさんもいつか出費がかさむライフステージに来たら同じだけもらえばいい。「アメリカ人のように高い報酬を望む」と言うならアメリカに行って勝負をすべきであって、あの国は日本より家賃も物価も高いから、その分、報酬が必要になるというだけです。

 「今の自分にとっていくら必要か」を正確に計算せずにむやみに「もっと稼がないと」と不安になっている人も多いので、その時は一緒に考えたり、「こういうふうにしたら、支出は抑えられるよ」と教えることもあります。オープンにすることで、お金の面の不安も解消しやすくなるんですよね。

報酬に関しても、よりオープンに個人と会社が交渉できる関係性を目指すということでしょうか。

:これまでの日本の企業文化では、社員と会社が1対1で報酬を交渉するという場面はほとんどなかったと思います。フリーランスの業務委託契約と同じように、「これだけのパフォーマンスを提供すると約束するから、これくらい欲しい」「その額を希望するなら、この部分をさらに強化して欲しい」といった交渉を誰もができるようになるといい。今の雇用関係は会社にとって有利な契約を一方的に結んでいるだけ。正社員という名の奴隷制だと言ってもいい。

 とはいえ、いきなり「全員自立してください」は無理だと思うので、移行期間として「自立できるまでは社員としていていいです。ただし、奴隷ですけど(笑)」というステップになるかと思います。僕としては、社員に「社員なんて、いい加減やめときなよ。もっと自由に羽ばたきなよ」と言い回っていて、「社長がそんなこと言うのおかしいです」とツッコまれてます(笑)。

では、孫さんの会社には、いわゆる正社員はいなくなっていくと。

:独立した自由人が集まる場でありたいと思います。「属する」ための会社ではなく、やりたいことを実現するための仲間や環境が手に入る場所としての会社、すなわち「場」を目指したい。うちのリソースだけでは実現できないことがあれば、一部は他の会社でやればいい。言うなれば、Mistletoeは、「本気で遊びたい人のための遊び場」のようなものをイメージしています。そのかわり、遊ぶなら本気で遊べよ、と。

人材が流出する心配はない?

:むしろどんどん外の世界に飛び出してほしいと思います。その経験を経てなお、Mistletoeが魅力的だと感じてもらえる場であり続けていたら、また戻って来てくれたり、一緒に仕事をしてくれる相手として選んでもらえるでしょう。働く人を縛り付けるのではなく、仲間としてより良い関係を築くことにエネルギーを投入する。これがこれからの会社の活路だと思います。

とても新しい改革ですね。

:これくらい思い切らなければ「働き方改革」なんて言っちゃいけないと思いますよ。副業解禁くらいだと「働き方修正」レベルじゃないですか。バージョンが0.1上がったくらいのマイナーチェンジにしか思えません。

孫さんは教育に関しても提言があるのだとか。次回じっくり伺っていきます。

構成・文/宮本恵理子 写真/竹井俊晴