とは言え、早くて5年先だと。今月末にオフィスを閉鎖というのは早過ぎませんか?

:今現在の僕たちの働き方だけで判断してみても、充分に早過ぎないと思えたんですよね。僕はシンガポール在住ですが、現地のオフィスに行くことも今はほとんどありません。すべてのミーティングが「ZOOM」というビデオ会議ツールで行われていて、出社する必要がない。「working anywhere(どこで働いてもいい)」という制度はすでに導入済みです。

 リアル会議と比べての良さは、議題についての話が済んだら「じゃ」とすぐに終えて、次のミーティングに移れること。リアル会議だと、40分で話は終わっているのに、1時間終了するまでの20分間、なんとなく雑談が続くようなムダが生まれませんか。それをなくせるのは大きなメリット。移動の時間的・体力的負担もない。

 さらに言えば、僕は同時に2、3個のミーティングを同時進行しています。「ふむふむ、なるほど。じゃ、この点についてちょっと皆で考えてみて」とチャネルを切り替えて「こっちはどんな感じ? ふむふむ」と。そしてまたチャネルを戻して「結論出た?」みたいな感じで。濃密なマルチタスクなので頭はめっちゃ疲れますが、単純に生産性は1.8倍くらいにはなっていると思いますよね。これができるのは、充分に価値観を共有できている相手だからなので、初対面の人とはできるだけ直接会うようにはしていますが。

 一方で、常に感じてきた違和感があって、僕は1人でビデオ会議に参加しているのに、相手はオフィスに集合して5人まとめて画面に映っていたりするんですよ。「どこで働いてもいいんだから、皆バラバラでいいはずなのに、なんで集まってんの?」と。

「習慣を変えるのは億劫」の罠

オフィスがあるから、とりあえず集まった方が安心と思う人は多いかもしれませんね。

:それが「経路依存性」という悪なんです。人間の習性として、一度慣れ親しんだものを変えることに億劫になってしまう。ただ「今までやっていたから」というだけで、明日も同じ行動を取ろうとする。だからいくら技術的に可能な環境が整っても、相変わらず朝から出勤したりするんですよ。「なんで会社に来てるの。バカじゃないの?」と僕は怒るわけです。

社長は「会社に来ないなんてけしからん」と怒るのがフツウだと思いますが、会社に来ると怒られるとは(笑)。

:だって、朝の通勤ラッシュって地獄じゃないですか。狭い空間にギュウギュウと詰め込まれて、1時間以上も揺られるだけなんて。人類の恥ずべき歴史として語られる奴隷船の絵図と何も変わりませんよ。あれを酷いと言うなら、現在の東京の通勤電車をすぐに改めるべきですよね。精神を蝕まれるような働き方は、僕は選択すべきではないと思っているんです。