創業140年の老舗製薬会社・塩野義製薬。巨大M&A(合併・買収)など変化の激しい製薬業界で、企業価値が長期低迷していた同社を高収益企業に変革したのが、生え抜きの手代木功社長だ。徹底した「理」の思考に挫折で知った「情」が加わった、強靭な変革者の素顔とは。

日経ビジネス本誌では、注目の経営者たちの生き様(Life Story)と講義(Lecture)を「経営教室『反骨のリーダー』」で連載している。今回は、塩野義製薬を変貌させた手代木功社長の人物伝を日経ビジネスオンラインに転載する。=本文敬称略(本コラムは日経ビジネス本誌2018年6月22日号に掲載した記事を一部、再編集して掲載しています。年齢や肩書は当時のまま)

■お知らせ■

塩野義製薬・手代木功社長を招いた読者との対話会「日経ビジネスRaise Live」を開催します。参加ご希望の方は、記事最後の募集要項をご覧ください。

■開催概要
日経ビジネスRaise Live
~塩野義製薬・手代木功社長「理と情の先読み経営」~

■開催日時 2019年1月21日(月) 18:30~
■参加者募集要項 こちら
(写真=的野 弘路)
(写真=的野 弘路)
手代木功[てしろぎ・いさお]
1959年 12月 仙台市生まれ。両親と姉の4人家族。父親は東北電力の技術者
78年 宮城県立仙台第一高等学校を卒業。東京大学理科Ⅱ類に入学
82年 東京大学薬学部を卒業。塩野義製薬に入社し開発部門に配属
87年 米国ニューヨークオフィスに駐在
91年 帰国。開発渉外部に配属
94年 2度目の米国駐在。カプセル会社に出向し、営業の責任者に
97年 帰国。社長室に配属
99年 秘書室長兼経営企画部長
2002年 取締役、経営企画部長
04年 常務執行役員、医薬研究開発本部長
06年 専務執行役員、07年から4本部を管掌
08年 4月 塩野義製薬社長(現任)
11年 5月 日本製薬工業協会会長(~14年5月)
18年 5月 日本製薬団体連合会会長(現任)

 武田薬品工業による6兆8000億円もの巨額買収劇に耳目が集まる製薬業界。同社がアイルランドのシャイアーをのみ込み世界トップ10入りを目指す意義を記者会見で強調した5月9日、淡々と3期連続の営業最高益を発表していた製薬会社のトップがいる。大阪に本社を構える塩野義製薬の社長、手代木功(58歳)である。

 塩野義の連結売上高は3447億円で武田薬品の約5分の1。一方、営業利益率は33.4%と武田薬品(13.7%)や国内第2位のアステラス製薬(16.4%)を圧倒する。塩野義の経営は、規模を追う他の大手製薬会社の対極にある。

 手代木は2008年に塩野義の創業一族である塩野家から48歳で経営を引き継いだ、生え抜きの“サラリーマン社長”だ。

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