創業当日のメルカリ。初日から参加できたのは山田進太郎氏(左)を含め2人だった
創業当日のメルカリ。初日から参加できたのは山田進太郎氏(左)を含め2人だった
起業したくても、失敗するのが怖くて なかなか踏み切れません。

 起業して苦しい時期が続くことはよくありますし、倒産や破産が怖くないといえばうそになります。

 でも、経験を積んでいけばどんなリスクがあるか事前に想像がつきやすくなります。そうすると「最小限に抑えることもできるだろう」と案外腹をくくれるものです。

 最初に起業したウノウでは、映画情報サイトや写真共有サイトなど10以上のサービスを作りました。中には受けたものもありますが、思い描く理想には遠く、事業としてあまりうまくいかなかったですね。

 「とにかく優れたサービスを作れば消費者がついてくるはず」と信じて、思いつくままにサービスを改善しましたが、消費者には全然響かない。そんな時期が何年も続きました。タイミング良く資金調達できたり、作ったサービスを売却できたりと、幸運が重なって生き延びていたのですが、当時の社員は「この人について行って大丈夫なんだろうか」と心配したに違いありません。

 自分の中で風向きが変わったのは、モバイルゲームに進出した08年ごろからです。世界を目指すという原点に立ち返り、どんなサービスなら世界に行けるかを考え抜きました。

 かつて任天堂やセガといった日本のゲーム会社が世界を席巻しました。携帯電話業界では、NTTドコモの「iモード」などが巨大なコンテンツ市場を世界に先駆けて構築していました。それをヒントにして、「モバイル」と「ゲーム」をかけ合わせた市場にチャンスを見いだし、ようやくヒットを飛ばすことができました。

 僕は、人生や会社の岐路に立って判断を下すときはいつも、取り得る選択肢についてメリットとデメリットを思いつく限り書き出すことにしています。

 メルカリを起業する時もそうでした。最初にあったサービスのアイデアは5~6個。失敗のリスクは大きくても、成功して最大のリターンが得られるものはどれか。こうした観点で選んだのがフリマアプリです。小学生や中高生向けの教育アプリも検討しました。でも財布のひもが固い保護者にお金を出してもらう必要があり、オンライン学習の普及にも時間がかかりそうなので、やはりフリマアプリの方が潜在市場が大きいとの結論を出しました。

 そもそも起業して失敗して失うものは何か。インターネットビジネスの場合、大きな投資は不要なので、デメリットはせいぜい、起業家としてのプライドや名声を失うぐらい。大したことはないな、と思い至ったのを覚えています。それに、最終的に成功すれば、以前の失敗など誰も気にかけないはずです。

 だから「起業はリスクが大きい」と言う人に対しては、「間違ってはいないが半分しか正しくないよ」と言いたい。起業から得られるリターンと、被るリスクの大きさのバランスを検討してみると、起業はとても「割に合う」。僕は本気で思っているんです。

山田氏が考える起業のポイント
  • 優秀なエンジニアをそろえ、強い開発チームを作る
  • 海外市場は日本ではない。現地の市場を知り抜く人材が必要
  • リターンとリスクのバランスに目を向けよ

皆さんは、メルカリを創業したシリアルアントレプレナー、山田進太郎会長兼CEOの連載を読んで、どう思いましたか? 日経ビジネスRaiseのオープン編集会議「起業のリアル」では、山田会長がメルカリを成功させられた理由について、皆さんのご意見を募集します。また、編集部が取材するメルカリ小泉文明社長へ質問もお寄せください。

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山田会長はなぜ、メルカリを成功させられたのか?

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