大胆にやろう

 失意の山田は12年末に退社すると即座に、ひそかに温めていたアイデアを実行に移す。世界一周旅行である。半年をかけて南米やアフリカなど、途上国を中心に二十数カ国を巡った。

 帰国後、目の当たりにしたのはスマホのあまりにも急激な普及だ。海外で目にした米アップルのiPhoneや、グーグルのOS、Androidを搭載したスマホが、日本でも同じように使われるようになっていた。

 「海外生まれのサービスを日本に持ってくるのではなく、世界で使われるサービスを日本で創ろう」。山田は13年2月、2度目の起業に乗り出した。複数の事業候補の中からフリマアプリを選んだのは「世界に類似サービスがなく、しかも世界中どこでも通用しそうなアイデアだったから」だ。

 メルカリ創業から現在に至るまで、山田がぶれずに守り抜いているものがある。「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」。

 フリマアプリを公開してしばらく後、小泉とホテルにこもって膝詰めで意見を戦わせ、たどり着いた経営哲学だ。現在は経営戦略から事業開発、採用、人事評価や異動など、企業活動のあらゆる領域で日々、価値判断の“ものさし”として使われている。 

 「ときにはほかの経営メンバーに『そのアイデアは大胆じゃない』といさめられる」と笑う山田。その柔らかい物腰や穏やかな口調だけでは、心に抱き続けてきた“野望”はうかがい知れない。だが、その目にはいつも「世界」が映っている。常に生存戦略を考え抜く頭脳と、大胆さを併せ持つ。山田はそんなリーダーだ。

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