しかもこの地域では現在、神戸市が大規模な再開発計画を進めている。一帯を一般車両が原則として出入りできない、歩行者中心の公園として整備するのが柱で、実現すれば、この土地と本館との行き来は現在より格段にスムーズになる。

それでも、セブン&アイの新経営陣はH2Oへの譲渡を決めた。
セブン&アイは何故、一大プロジェクトが進められていた神戸店の譲渡を突如決めたのか。それは「日経ビジネス」7月10日号の特集で詳報している。
もちろん、プロジェクトがすべて思い描くままに進んだ保証はない。たとえば現在の本館が建っている土地のうち、道路に面した一部は借地だ。しかも持ち主はライバル百貨店グループの阪神電気鉄道。そごう・西武を利することになるプロジェクトに、地主として反対した可能性は大いにある。
熟議された形跡は無く
だとしても、プロジェクトの是非、譲渡の是非について、セブン&アイとそごう・西武のあいだで熟議するべきではなかったか。特集でも報じた通り、今回の譲渡の意思決定にそごう・西武側はほとんど関与していなかった。ある関係者は「そごう・西武の社長だった松本隆氏ですら、譲渡を知らされたのは発表当日の朝だった」と証言する。

「商号は当面そごうのままで営業していくと聞きましたが、本当でしょうか。正直、阪急に変わってくれたほうが集客は見込めるのですが……」
記者が神戸店を訪れた6月上旬、アパレルメーカーから神戸店に派遣されていた男性社員はこう漏らしていた。譲渡があまりに唐突だったことで、店頭では確実に戸惑いの声が上がっている。譲渡の是非はともかく、その決定プロセスについては、セブン&アイ社内で改めての検証が必要ではないだろうか。
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