「中国の圧力に耐えるのは容易ではない」

 今もオーストラリアの政治は深刻な問題を抱えています。中国マネーに踊らされ、彼らの都合のいいように操られる政治家がいます(昨年、野党議員が中国企業から金銭支援を得て中国寄りの発言をしていたことが発覚している)。特定の政治家が買収されていたように、北京は個人を通してその国に影響を与えます。誰が北京の利益になっているのか、それはなぜなのか、注意して見ていく必要があるのです。

経済界からは豪中関係の悪化を不安視する声が出ています。オーストラリア経済は中国との取引を拡大させており、既に中国なしでは立ち行かない状況です。

ハミルトン:(豪州産ワインの一部が中国の関税で足止めされたり、豪政府関係者に中国のビザが発給されなかったりといった)今オーストラリアが受けている北京からの圧力は最低限のものに過ぎません。北京のさじ加減一つで、もっときついプレッシャーを受けるリスクも十分にあります。習近平国家主席がオーストラリアと長期的な友好関係を結びたいと考えるのならば話は別ですが、今のところそうした兆しは見えない。スタンスは強硬です。

 オーストラリアは中国の圧力に耐えて中国との関係をリセットできるか。北京がバックオフ(後ずさり)するまで強い態度を保てるか。残念ながら、現状で北京は今もオーストラリアの政治、経済、学界、メディアエリートの手綱を握っています。今の段階では北京の圧力に抗することは難しいかもしれません。

中国の弱点はソフトパワー

中国の影響力はアジア太平洋全体に広がり、かつ深まっています。

ハミルトン:中国にも弱点はあります。たとえば経済的、軍事的な影響力に比べて文化的な影響力(ソフトパワー)は小さい。彼らが持つマネーに群がる国々も、社会主義まで取り入れようとはしていません。民主主義のシステムに比べ中国の政治経済システムは硬直的で脆い部分がある。経済が立ち行かなければ、たちまち行き詰まるリスクを抱えています。

 もっとも、しばらく中国の成長は続くでしょう。長期的に向き合っていくためには、互いの利益になる形を追求しつつ、かつ内政干渉には強い態度で臨まなければなりません。経済と政治とをできる限り分離し、経済的関係を構築したいというメッセージを北京に送り続ける必要があるのです。

 これを実現するのは容易ではありません。中国との関係を見直すにはコストがかかるからです。経済的な損失を覚悟しなければいけないところまで来ています。アジア太平洋地域の各国に求められているのは、「自分たちの主権はいくらの価値があるのか」を見極めることです。主権を犠牲にしても(中国の支援を得て)GDP(国内総生産)の成長を優先させたいのか、あるいは、GDP成長をある程度犠牲にしても、自分たちの価値観を守るために中国との関係を見直しに踏み切るのか。各国が決断を迫られているのです。