打越:そこで、市場が転機を迎えたのをきっかけに、パフォーマンスが低いディーラーを重点的に支援する試みを始めました。販売ネットワークの規模(量)を拡大するだけでなく、全体の効率(質)を高めるのが狙いです。

具体的にはどうするんですか。

打越:日産はグローバルに事業展開するなかで、北米や欧州などの成熟市場で培った様々なノウハウがあります。そのなかから、北米で実績を上げたパフォーマンスの低いディーラーを改善するプロセスを取り入れ、中国の実情に合うように改良して実践しています。

 中国には長年の人間関係を大切に文化がありますから、ドライな北米のやり方をそのまま持ち込めばディーラーの反発を呼びかねません。そこで、北米の経験をまず私たちが消化吸収し、中国で実際に使える施策に落とし込む。そのうえでディーラーに提案することがカギになります。

 実は、その過程でも独自の企業文化が生きました。私たちは得てして自分が担当する市場ばかりを見て、「中国では中国のやり方でやるんだ」という固定観念に陥りがちです。しかし東風日産の中国人社員たちは、日産のグローバルな経験を常にベンチマークにしながら、その良いところを中国化して取り入れる。そういう柔軟性や多様性を持っているんです。

成果はいかがですか。

:私たちが社内で「SPC」と呼んでいるプロジェクトがあります。これは東風日産が第三者のコンサルティング会社に依頼し、ディーラーの社員研修の支援を行うものです。コンサルティング会社のトレーナーが販売店の現場に入り、セールスマンたちと一緒に1週間かけて問題点を洗い出します。そして解決策を立てて実行し、その効果を検証するのです。

 この活動をこれまでに30余りのディーラーで行ったところ、研修前と研修後では販売台数が40~50%増加しました。研修前は毎月50台しか売れなかった販売店が、研修後は100台に倍増した例もあります。もちろんこうした結果も大切ですが、最大の成果はディーラー経営者やセールスマンに自信がつき、実行力が大幅に高まったことです。

どの分野に於いても、基本に忠実な経営をどこまで細かく、深く実践できるか。その徹底の度合いが市場での勝負を決めるということですね。

競争はますます激しくなる

打越:私たちはそれを実現できる企業文化を合弁の初期からしっかり作り、受け継いできました。年販100万台という目標を昨年ついに達成できたのは、そのおかげだと思います。

 では今後はどうするか。そんな議論をしていた時、陳さんのセールス・マーケティング部門から出てきた提案は「もう一度お客様をちゃんと見よう」というものでした。今年を「お客様の年」と位置付け、改めてお客様の満足度を高めることを最優先に考えて活動しようと。そんな思考が社内から自然に出てくることを、私はとても誇りに思っています。

最後に、中国市場の将来予想をお聞かせいただけますか。

打越:この先数年は、まだ堅実に市場が拡大していくと思います。ただ、そのなかで地域ごとの伸び率の差がより顕著になってくる。また、中国メーカーの「ローカルブランド」がますます成長すると見ています。

 乗用車のカテゴリーではSUVの伸びに加え、中国政府が「一人っ子政策」を廃止したことをふまえ、家族みんなで乗れる7人乗りのミニバンの人気が高まっていく。また、ハイブリッド車や電気自動車などの新エネルギー車もますます注目を集めると予想しています。

:市場の競争は今後さらに激しくなると思います。と言うのも、全てのメーカーが生産拠点のフル稼働を前提に将来目標を立てているからです。中国市場は年間2500万台に迫る規模に成長しましたが、そこにはローカルブランドを含めて90を超えるブランドがひしめいています。今後、淘汰されるブランドが出てくるのは必定です。

 しかし市場環境がどう変化しようとも、東風日産の考え方は一貫しています。全体としての成功を勝ち取るには、個別の成長機会をひとつひとつしっかりとつかむ。それこそが要諦だと思います。

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