:その通りです。例えば私たちは昨年、SUVの新型「ムラーノ」を発売しました。このムラーノについて市場調査をした時、あるお客様が「自分は買わない」と答えた。そこで理由を聞くと、彼は「四輪駆動モデルが用意されていないからだ」と答えたとします。

 しかし、この調査結果を鵜呑みにして四駆版を追加投入しても、このお客様がムラーノを買ってくださるとは限りません。なぜなら「四駆がない」というのは口実に過ぎず、本当の理由は「予算が足りない」かもしれないのです。

 中国人は、ある商品が欲しいけれど自分の経済力では手が届かない時、しばしば別の理由を口にします。そんな婉曲的な表現をするのは、面子を重視する中国の文化や習慣が背景にあります。

別の言い方をすれば、東風日産は競合他社より市場の深読みに長けている可能性がある、ということですね。

打越:中国市場は広大かつ多様性に富んでいるので、都市や地方によって調査結果の読み方も違ってきます。先ほどのムラーノの話にしても、ある地方では本当に四駆がないと売れないかもしれないし、別の地方では四駆がなくても売れるかもしれない。また、同じ車種でも地方によって売れ筋の価格帯が違います。

 そんな細かな市場ごとの違いを深掘りして、販売現場の声もちゃんと聞いたうえで、商品企画やマーケティングにフィードバックする。そういう地道な努力を当たり前のようにやるのは、やはり私たちの企業文化だと思います。

販売ネットワークは「量」から「質」へ

話が変わりますが、中国ではモータリゼーションの広がりとともに、乗用車販売の主戦場が大都市から地方都市に移りつつあると聞きます。東風日産はどう見ていますか。

東風日産・陳昊市場銷售総部(セールス・マーケティング部門)副総部長

:今は主戦場が大都市から地方都市に移っていく途上にあります。大都市で売れなくなったわけではありませんから、私たちメーカーとしては大都市と地方都市のどちらも大切です。とはいえ販売の伸び率は地方都市の方が高いので、将来を見据えた戦略の重点はやはり地方にあります。

ということは、販売ネットワークを地方へさらに拡げる必要がある。

打越:いや、必ずしも拡大一辺倒ではありません。確かに、私たちは2014年の前半まで販売ネットワークの拡大に重点を置いていました。市場がどんどん伸びていたので、それに遅れないように販売網を拡げていく。もっと北に伸ばそう、西に伸ばそうと頑張っていました。

 しかし、2014年の後半からはネットワークの「質」をもっと高めなければならないと感じ、拡大と同時並行で取り組んでいます。

ネットワークの質とは?

:中国の自動車市場は3年前まで毎年二桁成長が当たり前でしたから、私たちを含む全メーカーが販売ネットワークの拡大を追求していました。「今日の販売網の規模が3~4年後の販売力を決める」と考えていたからです。要するに、二桁成長はまだまだ続くと信じていた。

 ところが2014年後半に転機が訪れました。市場の成長速度がはっきり下がり始めたのです。これはディーラーの経営者にとって大きな試練になりました。それまで、ディーラー経営者の多くは規模拡大のことばかり考え、人材教育や社内管理が相対的に後回しになっていた面があったんです。

打越:ディーラー経営者のなかには非常に優秀な方もいますし、当然ですが、それほどでもない方もいます。そして、実績が出ない場合には必ず理由があります。