中国市場でシルフィが成功した背景には、商品力や販売力を地道に磨き続けた「実行力」や「継続力」がある。そして、それを支えている土台は東風日産の企業文化であると。具体的にどういうものなのか、お聞かせいただけますか。

打越:例えば「トヨタ生産方式」は、トヨタ自動車さんが長年かけて培った企業文化の体現ですよね。他の企業が表面的に真似たとしても、現実にはなかなかうまくいかないと思います。逆に言えば、独自の企業文化があるからこそトヨタさんは強い。

 それと同じで、あるひとつの商品がヒットした時、それがたまたま偶然だったら他社も真似できるかもしれません。しかし、シルフィのように継続して売れるクルマを生み出すのはそう簡単なことではありません。

 その点、私たちには日中合弁企業としての固有の文化があり、仕事のやり方があります。

東風日産の企業文化は、日本の親会社の日産とも中国の東風とも違うということですか。どんな場面で力を発揮するのでしょう。

打越:例えば、シルフィは中国市場だけでなく北米や日本でも販売しています。日産ブランドのクルマはやはりグローバルな商品であり、日本の本社が中心になってデザインや商品企画を詰めていきます。

 そんなグローバルな開発体制の下で、中国のお客様が本当に求めている商品を作り込むにはどうすればいいか。重要なのは、まず東風日産のなかでしっかりと議論を重ね、意見を統一したうえで「こういうものが欲しい」と日本に伝えることです。そうしないと、中国のお客様の心をとらえる商品を作り続けるのはなかなか難しいと思います。

 その点、東風日産には、出身母体の違う日本人社員と中国人社員がお互い遠慮なく意見をぶつけ合える雰囲気があります。だからこそ、双方が知恵を出し合って相互に納得できる方針を決められます。

東風日産の「ワンボイス」

寄り合い所帯の合弁企業でありながら、方向性がぶれない。

打越:はい。どんな経営課題にも東風日産としての「ワンボイス」で取り組む。それが私たちの企業文化の強みです。

:この会社では、日本人であれ中国人であれ同じ目標を掲げて共同で努力し、よりよい結果を出すことに最大の価値を置いています。「自分が正しい」とか、「相手が間違っている」とかではなく、あくまで結果で判断する。文化的背景の異なるメンバーが一緒に仕事をする場合、この点は非常に重要です。

東風日産の工場で組み立てられる「シルフィ」

 私たちはシルフィを「中国ナンバーワンのファミリーカーにする」という目標の下、全社一丸となって努力してきました。その課程では、日本側の意見が正しかった時も、中国側の意見が正しかった時もあったと思います。しかし意見の違いはたいした問題ではありません。

 重要なのは「シルフィをナンバーワンにできたかどうか」です。結果の前では自分が日産出身か、東風出身かといった立場の違いは捨てる。よりよい仕事をして結果を出すことが最優先なんです。

意見が対立してまとまらないことはないんですか。

:それを防ぐために欠かせないのが、お互いに自由に意見を言える雰囲気です。仮に意見に隔たりがあっても、お互いに会社をよりよくするために協力して仕事をしているというコンセンサスがあります。だから私は、言うべきだと思った時は打越さんの部屋に怒鳴り込むことだってあります(笑)。