打越:お客様に最終的にクルマをお届けするのは、あくまでも私たちのディーラーです。また、ネット活用の度合いは顧客層や車種によっても異なります。私たちがお客様へのアプローチを考える時、「こういう顧客層がターゲットだからネット・プロモーションを増やそう」とか、逆に「増やす必要はない」とかケースバイケースです。とはいえ、販売面でのネット活用の重要性が全体的に増してきているのは間違いありません。

シルフィはネット世代の若い顧客層にも売れているんですか。

:先ほども説明したように、シルフィの顧客層は家族を大切にする、自分よりも家族の満足を重視するお客様です。

 一方、最近は1990年代以降に生まれたいわゆる「90后」(ジウリンホウ)の若いお客様が増えています。中国社会は90年代から急速に豊かになりました。政府の「一人っ子政策」もあり、物心ついた時から日々の生活に何の憂いもなかった世代です。また、子供の頃からネットを使いこなして多くの情報を取り入れ、海外の最新トレンドの影響も受けています。

 そんな彼らの特徴は、年上の世代よりも自分自身を大切にすることです。自分が大好きで、外に向かって個性を表現したいと考えています。そんな新世代のお客様が増えるなか、私たちの販売戦略も変わりつつあります。

「家族を大切にする文化」では、90后はカバーしきれないと。

:シルフィは欠点がなく、所有することに家族みんなが「満足感」を覚えるクルマです。しかし、90后のお客様がクルマを選ぶ基準は自分が「好き」かどうか。商品としての総合的なバランスよりも、自分が気に入ったかどうかが重要なんです。

東風日産の新型セダン「ラニア」。中国の若者をターゲットに2015年10月に発売した。クーペ風の個性的な外観は、デザインを北京にある日産デザインチャイナの若手デザイナーが手がけた。中国名の「藍鳥」(ランニャオ=青い鳥)は「ブルーバード」が由来。全長4683mm×全幅1780mm×全高1465mm。排気量1600cc。実売価格は9万~12万元(約140~185万円)

 そこで東風日産は昨秋、個性的なデザインの新型セダン「ラニア」を中国市場に投入しました。ラニアは「自分はこのクルマが好きだ」、「私のクルマは他とは違う」、「クルマを通じて個性を表現したい」と思っているお客様に向けた戦略商品です。

 もちろん、家族の満足を重視するお客様はこれからもシルフィを好むと思います。一方、自分が大好きで個性を表現したい若いお客様はラニアを選ぶでしょう。私たち東風日産としては、シルフィとラニアが補完し合ってともに成長してもらいたいと願っています。

我々に飛び道具はない

ここまでのお話をうかがっていると、シルフィの成功の背景には、競合他社があっと驚くマジックがあるわけではなさそうですね。

打越:私たちが何か「飛び道具」のような手段を使ったとか、物量作戦でマーケティングをがんがん打ったとか、そういうことではないのは確かです。

 それよりも、例えば地方の小規模なモーターショーにも欠かさず出るとか、ディーラーの社員教育を支援するとか、ネットの活用をしっかりやるとか。自社の商品の強みをきちんと理解したうえで、やるべき仕事をひとつひとつこなす。画一的なマーケティングではなく、地に足の着いたきめ細かい活動を地道に続ける。シルフィの成功は、そういった積み重ねの成果だと思います。

他社との違いは「実行力」「継続力」にあるということですか。

打越:そうですね。私たちはシルフィの商品力に自信がありますし、販売網も充実しています。でも、それだけで今のシルフィがあるとは思いません。

 やはり、中国の顧客ニーズに応えたクルマの作り込みや、地域のニーズに適した売り方を実践する。そういうことが当たり前にできる土台というか、独自の企業文化が東風日産にはあります。優れた商品力や販売力は、この土台があってこそ真価を発揮できる。私はそう考えています。

なるほど。強さの源泉は企業文化にあると。そこのところをもっと詳しく聞かせてください。

(次回に続く)