:シルフィが高い評価を確立できたのは、価格以外の理由によってです。これまで説明した商品力に加えて、販売面でも様々な努力をしています。

競合メーカーとは売り方も違うということですか。

:シルフィはファミリーカーですから、家族を大切にする中国文化への適応を販売活動でも実践しています。販促イベントは、ディーラーにお客様を招待するだけでは不十分です。「私たちのお客様はどこにいるのか」という基本的な発想をもとに、中国のファミリーが好んで出かけるところ、興味を持っている場所を入念に選んでいます。

 例えば3月のマイナーチェンジの発表会は、北京、上海、深圳、成都、武漢、の5大都市で、家族連れに大変人気のあるテーマパークのなかで開催しました。そうすることで、お客様に家族揃って来ていただくのが狙いです。

 5大都市以外でも、新発売のイベントを3月21日に全国115都市で一斉に行いました。これはプロモーション効果を最大化するためです。同じ日に同じ活動を全国同時に行うことで、お客様だけでなく各地のローカル・メディアの注目も集めやすくなります。

中国市場は「巨大で単一」という思い込み

ターゲットを明確にすることで販促効果を高めているんですね。

打越:販売プロモーションのやり方も地域ごとに差異化しています。日本から見ると、中国はひとつの巨大市場ととらえられがちです。しかし実際には、大都市と地方都市、あるいは東西南北の地方によって、消費者の嗜好や所得水準がかなり違います。売れるクルマも当然変わってきます。

 そこで、それぞれの都市や地方の傾向に合わせて販売の重点車種を選んだり、マーケティングの内容を調整したりしています。販売組織は昨年まで全国を4地区に分けてマネジメントしていましたが、今年から12地区に増やしました。地域によって異なるニーズに合わせて、よりきめ細かいマーケティングができるようにするためです。

地域ごとの差異化について、実例を教えてもらえませんか。

:例えば中国南部の華南地区では、日産のほかにもトヨタやホンダの合弁会社が集中していることもあり、もともと日本車に人気があります。日本車の市場シェアが高い地区では、私たちの最大の競争相手は他の日系メーカーになります。したがってシルフィの販売プロモーションを打つ場合、日系メーカーで正面から競合する車種を念頭に計画を立て、実行します。

 反対に日本車の市場シェアがそれほど高くない華北地区などでは、最大の競争相手はおそらく日系メーカーではありません。シルフィと正面から競合するクルマは、例えば上海フォルクスワーゲンの小型セダン「ラヴィーダ」などです。そんな地域の販売プロモーションでは、ラヴィーダに対してシルフィが優れている点をアピールします。それも広告宣伝だけでなく、個別のお客様にしっかり対応していきます。

フォルクスワーゲン・ラヴィーダ。独フォルクスワーゲン(VW)と中国の上海汽車の合弁会社が生産する小型セダン。中国名は「朗逸」(ランイー)。旧型「ゴルフ」の車台をベースに開発された中国専用モデルで、VWブランドの最量販車種である。全長4605mm×全幅1765mm×全高1460mm。エンジンは排気量1200ccと1400ccのターボ、1600ccの自然吸気の3種類。実売価格は9万~12万元(約140~185万円)

先ほどインターネット上のクチコミも重要というお話がありましたが、クルマの販売プロモーションにもネットを積極活用しているのでしょうか。

ネット経由の成約は全体の19%に

:東風日産はネット上に「車巴巴」(チョババ)という独自の販売プラットフォームを持っており、すべての正規ディーラーがそこに「オンライン販売店」を開いています。お客様は地元のディーラーがどこにあるか、クルマの価格はいくらか、どんなプロモーション活動があるかなどの情報を、居ながらにして知ることができます。

 また、中国のネットビジネスは急速に発展しており、最近は特にスマートフォン向けのプロモーションが盛んです。それとともに、アリババやテンセントなどスマホ向けのビジネス・プラットフォームを提供するネット企業との協業が増えています。この点に関しては、中国は海外より先を行っているかもしれません。

スマホ向けのプロモーションには、例えばどんなものがあるのでしょう。

:「揺紅包」(ヤオホンバオ)をご存じですか?。スマホのセンサーを利用したくじ引きの一種で、端末を揺すって当たりが出ると紅包(ご祝儀)がもらえます。中国の消費者の間でとても人気があり、多くの企業がプロモーションに活用しています。 

くじに当たったら紅包をもらいに販売店に来てもらうことで、新規顧客との接点ができるわけですね。

:そういうことです。ネットを活用してお客様にアプローチする方法は、車巴巴や揺紅包のほかにもいろいろあります。そして、お客様がネット上のフォームに連絡先を入力すると、最寄りの販売店からコンタクトします。東風日産では、このようにネットを入口にしてお客様のアポイントを取り、最終的にクルマの成約に至った比率が総販売台数の19%になっています。