ここ数年、中国の自動車市場ではSUVの人気が高いと聞きます。そんななか、中国で昨年最も売れた日本車が、ごく普通の小型セダンの「シルフィ」だと知って意外でした。なぜ好調なのか、ぜひ秘訣を聞かせてください。

打越:わかりました。今回は経営面の大きめの話を私から、より具体的な説明をセールス・マーケティング担当の陳さんからさせてもらいます。

東風日産乗用車の打越晋総経理(社長に相当、役職名は取材当時、以下同)

 まず中国市場の最新のトレンドですが、おっしゃる通りSUVの販売にとても勢いがあります。と同時に、中国メーカーの「ローカルブランド」のクルマが販売を伸ばしています。また、クルマを購入するお客様の年齢層がより若い世代にシフトしつつあります。この3つが今の市場の特徴と言えます。

外資系ブランドのセダンにとっては逆風に聞こえますね。

日本では地味なセダンがなぜ売れる?

打越:いや、そうは言っても市場のサイズという観点では、いわゆる「Cセグメント」のセダンが今でも一番大きいんです。中国という世界最大の自動車市場のなかで最大のセグメントですから、非常に大きなマーケットなのは言うまでもありません。シルフィはそこに向けた私たちの主力商品です。

 おかげさまで東風日産は昨年、念願だった年販100万台の目標を達成しました。これは2年前に投入したSUV「エクストレイル」や、若い世代のお客様に向けて昨年投入した小型セダン「ラニア」がヒットし、市場の最も伸びているセグメントに地歩を築いたのが大きいと思います。しかし販売の絶対数という意味では、最大の功労者はやはりシルフィなんです。

セダン全体では勢いが鈍っても、市場が大きいゆえに個別のモデルにはまだ伸びる余地があると。中国の消費者はシルフィのどんなところを評価しているのでしょう。

:グローバルに評価されている日産ブランドの信頼や品質に加え、中国特有の消費者心理にしっかり応えていることです。

東風日産・陳昊市場銷售総部(セールス・マーケティング部門)副総部長

 中国には家族や親戚をとても大切にする文化があります。そこで私たちは、2006年にシルフィを中国で発売した当初から「家族のためのセダン」であることを一貫して強調してきました。具体的には端正な外観、質感の高い内装、運転のしやすさ、快適な乗り心地、後席の余裕、トランクの広さなどです。さらに実用燃費が優れ、故障が少ないのでメンテナンス費用もあまりかかりません。

 つまり、家族を大切にする中国文化への適応と、ランニングコストの低さを両立した。それによって競合車と差別化し、消費者の間で「中国の家族にとって最適のセダン」という評価を確立できたのが大きいと思います。

「豊かさを家族と分かち合いたい」

中国文化への適応について、もう少し詳しく教えてもらえませんか。

:大事なのは中国人の心理への深い洞察です。ファミリーカーを購入するお客様は、自分の家族を大切にすると同時に、「そういう自分の気持ちを家族に理解してもらいたい」と考えています。マイカーは生活の豊かさの象徴ですから、自分の成功を家族と分かち合いたいという気持ちもあります。

 そんな心理に応える理想のファミリーカーは、見た目が立派で、運転しやすく、乗り心地が快適なだけでは足りません。ドライバーが満足するのは大前提で、それ以上に後席や助手席に座っている家族に快適に過ごしてもらうことが重要なんです。

 では、中国人の家族は何を重視するのでしょう。

:家族にとっては、週末に一家で出かけてたくさん買い物をしてもトランクに積み込めるかどうかや、ランニングコストがどのくらいかかるかも気になります。シルフィはそんな中国人の欲張りなニーズを高い次元で満たしています。ドライバーにとっても家族にとっても文句のないクルマ。つまり「欠点のないクルマ」であることが評価されています。

しかし、競合他社も中国の消費者心理を研究し、同様のクルマ作りを目指しているのでは。どこで差がつくのでしょう。