
昨年、中国では2460万台もの新車が売れた。日本(504万台)の5倍弱、米国(1747万台)の1.4倍という、文句なしに世界最大の自動車市場だ。
そんな巨大市場で、昨年最も売れた日本車の名前をご存じだろうか。
答えは日本を代表するグローバルカーのトヨタ「カローラ」。
…でもなければ、ホンダ「アコード」でもない。
日本市場では地味で目立たないイメージのある日産の小型セダン「シルフィ」である。
シルフィは日産自動車と中国の東風汽車の合弁会社「東風日産乗用車」で現地生産されている。中国名は「軒逸」(シュエンイー)。昨年の販売台数は前年比11.3%増の33万4100台に達し、乗用車の販売台数ランキングで第4位に食い込んだ。

トップ10に入った日本車はシルフィのみ。セダンのカテゴリーに限れば、上海フォルクスワーゲンの「ラヴィーダ」に次ぐ堂々の第2位である。
と、ここまで読んで疑問を感じないだろうか。中国経済の成長が減速するなか、高額な耐久消費財である自動車の売れ行きは真っ先に影響を受けるはずだ、と。実際、昨年の自動車市場全体の成長率は4.7%と、前年(6.9%)よりも鈍化している。
とは言え、中国は自動車普及率がまだ低く、息の長いモータリゼーションの途上にある。経済減速の打撃が大きいのはトラックやバスなどの商用車であり、個人のマイカー購入熱はそれほど冷めていない。乗用車だけで見れば、昨年の成長率は7.3%と比較的高い水準を維持している。

出所:中国汽車工業協会
そんななか、シルフィの販売の伸び率は乗用車の平均を4%も上回った。しかも、現行モデルの発売は2012年。モデルチェンジから4年目の地味なセダンが、市場平均を超える高い成長を見せ、ランキング上位に食い込むなんて、日本市場ではちょっと考えられない。
東風日産は一体どんなマジックを使ったのか。詳しくはインタビュー本文をお読みいただきたいが、そこには減速中国を勝ち抜くためのヒントが詰まっている。お話を聞いたのは同社総経理(社長に相当)の打越晋氏と、市場銷售総部(セールス・マーケティング部門)副総部長の陳昊氏のお二人。前編・後編の2回でお届けします。
(※ このインタビューは今年3月下旬に行いました。筆者の事情で掲載が遅れたことをお詫びします。肩書きは当時のものです)
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